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審判

ドリーム小説
アヴドゥルの父親だという人物を目にして、の心に鋭い痛みが飛来した。気づいた恋心と、死を悼む気持ちがごちゃまぜになって、俯いてしまう。アヴドゥルの死を止められなかったことに責任を感じていた。
家の中に入ってしまったアヴドゥルの父とジョセフの話に混ざる気にもなれず、しばらく立ち尽くしていたは、ポルナレフの後を追ってのろのろと浜辺へ向かった。
砂浜には古びたランプのようなものが転がっていて、ポルナレフの足跡が草むらに続いていた。
「ポルナレフ?」
声をかけながら近寄ると、ポルナレフの興奮した声がを呼んだ。背の高い草をかき分けてみれば、彼はぴかぴか光る財宝の傍に膝をついて驚いていた。
「こ、こ、これ、まじでナポレオン時代の金貨だぜ!?あのランプの魔人、どんなトリックを……い、いや、これは偽物なんかじゃあねぇ!」
「何があったの?ランプの魔人って、あのランプの魔人のこと?」
「女が増えたな。ではお前の願いもきいてやろう。その前に、お前だ」
いくつか願いを数えたうえで、やけっぱちになって叫んだポルナレフに魔人の声が突き刺さる。異音に気づいて草むらの奥へ向かってしまった背中を追おうとしたに、魔人は再び話しかけた。
「願いを3つ言え。叶えてやろう」
「あ、じゃああれの続きを出して。週刊だからもう3冊くらい出てるでしょ」
鞄に入っている漫画雑誌の名前を挙げると、魔人はひどく機嫌を損ねたようだった。大げさな効果とともに消え去ると、の足元に3冊の雑誌が落ちてくる。
「(あとで取りに来よう)」
は雑誌をそのままに、ポルナレフがなぎ倒した草の跡を辿った。
うまくポルナレフの足跡を追えない。悲鳴はどこからか聞こえてくるのに、草の背が高いのと頑丈なのとで、痕跡が見つけられないのだ。
「ポルナレフ―!どこにいるのー!ポルナ……んぐっ」
後ろから、誰かに強く口をふさがれた。は身が竦んでしまったが、すぐに戦いの日々で培った攻撃の仕方を思い出して、思いっきり腕に力を入れる。勢いよく後ろの人物に肘を入れようとして、その腕も止められる。
浮かせた腕の、の細い手首をつかむ大きな手に、その肌の色に目を丸くして、の身体から緊張が抜けた。
「落ち着け、。ポルナレフを追おう」
の胸が一瞬でいっぱいになって、涙があふれた。こぼれた滴が、口元を覆っていた手に伝わって、背後でびっくりした気配がする。手首から離れた片手を大きく伸ばして、彼は安心させるように一度だけを抱きしめた。

「聞いて驚け、誰に会ったと思う!?」
喜びで顔に満面の笑顔を浮かべ、ポルナレフは花京院に詰め寄った。
戦いのあと、ポルナレフの傷を治したは口をへの字に曲げて涙をこらえ、見かねたアヴドゥルがその華奢な肩に手を置いて歩いていた。
「アヴドゥルの野郎が生きてやがったんだよォー!」
反応は薄かった。
「さ、出発するぞ」
あまりにも自然になじんでいるアヴドゥルに、とポルナレフは口を閉じられない。
「ま……まさか……」
「知っていやがったのかァー!?」
は一気に涙がひいていくのを感じた。ジョセフも、承太郎も、花京院も、アヴドゥルの生きているのを知っていたのだ。とんでもない話だと思った。涙を返せとは言わないし、あの時感じた後悔も、やるせない思いも確かに自分の糧になっている。しかし、しかし。
「ポルナレフは口が軽そうだから……」
「はぁああ!?」
とうとう我慢できなくなったが花京院につかみかかった。自分より高い位置にある襟首を掴んでがくがくゆする。
「私のことも信用してなかったってわけ!?はぁ!?」
、ちょ、ちょっと待ってくれ、それは僕じゃないんだ」
「……誰」
剣呑とした眼差しに、花京院はジョセフを指さした。は死ぬほど悔しそうな顔で花京院から手を離すと、ジョセフに標的を変える、かと思いきや、アヴドゥルのローブに飛び込んだ。
「うわあぁあーん!」
強くアヴドゥルの身体を抱きしめて、は声をあげた。もう泣いてはいなかった。
は顔を上げて、じっとアヴドゥルを見つめた。何か言おうとして、やめて、やっぱり言った。
「あんまり後に引っ張ると、死亡フラグになりそうだから今言っていいですか!?」
「あ、あぁ、なんだ?」
「私、アヴドゥルさんのこと好きです!」
「……!?」
潜水艦へ向かっていた全員がとアヴドゥルを振り返った。は言うだけ言ってぱっとアヴドゥルから離れると、赤い顔を隠すようにきびすを返した。その頭上に、呼んでもいない子供が浮かび上がる。
「え?」
の心が成長したわけではない。そこにあったのは、自分の想いを認めて向き合おうという姿勢だった。ふわりと子供が手足を伸ばし、青年の姿に変わる。テレスポロスはアスクレピオスになり、その手には蛇の杖を持つようになった。
は1人、納得する。この世に無駄なことがないというのなら、これは必要なことだったのだ。
ペルソナはのなかへ帰り、立ち止まっていたは放り出してあった荷物を手に取る。
「私、潜水艦初めて。中どうなってんの?」
あまりにけろりとした様子に、花京院はさっきの告白が冗談だったのではないかと錯覚した。

ゲブ

ドリーム小説 ハイプリエステスの襲撃を退け、浜に上がったあと、戦闘の緊張から解放されたはいつもの調子で軽口をたたいていた。そういえば入れ歯を抜いた人の×××がものすごい良いらしいね、とか、ポルナレフが喜びそうな話だ。耳をの口元に近づけ、ひそひそと何か下ネタをやり取りしてはケラケラと笑うポルナレフに、告白した当人ではなくされたほうのアヴドゥルが気まずい思いをしている。
この時アヴドゥルは、の言葉が生きていた自分に対する最大限の喜びを表したものなのだろうと思い込もうとしていた。というよりも、の態度があまりにも普通だったため、そう思わざるを得なかったのである。
砂漠を渡るため、一行は車を手に入れることにした。それは後部座席に4人がギリギリ腰かけられる荷台付きの車だった。
「せっかくだし、とアヴドゥルを隣同士にさせてやるか」
ポルナレフの悪戯心が顔を出す。承太郎に耳打ちしたポルナレフは、下ネタで自分に逃げてこられないよう、をアヴドゥルと承太郎で囲む形で後部座席に座らせたのだ。いったいどんな反応を見せてくれるのか、と、承太郎の陰からひょいと顔を出して覗いてみて、ポルナレフは拍子抜けした。
はいたって普通の態度でアヴドゥルと話している。アヴドゥルのほうも、構えていた気持ちが意味のないものだと思ったのか、完全に大人の態度である。
「あぁーっ!そういえば私、あのランプの魔人に漫画雑誌の新刊出してもらったけど、持ってくるの忘れてた!」
「ジャッジメントが生み出すものは元が土だからな。カメオの倒れた今、土に戻っているのではないか?」
「なんだ……じゃあ先に読んでおけばよかった」
もちろん、の告白が伊達や酔狂や冗談だったというわけではない。ただ、は自分の中で区切りをつけてしまったのだった。
会話の途切れた瞬間に、ちらり、とはアヴドゥルの横顔を見る。好きだという気持ちに嘘はなく、変わることもない。
「(まあ、でも、失恋は確定してるわけだし……)」
あえて引きずってみせて、アヴドゥルに迷惑をかけることもないだろう。はそう思っていた。返事を聞かないうちから、決めてかかっていた。その先にはやさしい大人の拒絶があるのだと。は自分でも気づかないうちに、物わかりのいいふりをすることで自分の心を守っていた。そしてどこか心の奥底で、自分の狡さに気づいていた。
承太郎はそんなの精神状態を察していた。目を見ればわかる。はアヴドゥルのことが確かに好きなのだ。
「(だが、あえて言う必要もねぇか)」
これは当人たちの問題だ。承太郎は黙ったまま、ポルナレフの話に相槌を打った。

砂漠の砂がヘリコプターの風にあおられて車のフロントガラスをこすった。車から降りた6人は、砂ぼこりから顔をかばいながら、砂に降り立つヘリを見る。
「助っ人を連れて来てくれたんじゃ」
ヘリからは2人の男が現れた。しかしこの2人はスタンド使いではなと言う。はヘリの後部座席に目をやった。人影は見えなかった。
座席のベトベトに目を留めたポルナレフにジョセフが警告を叫んだ。そのとたん、座席にまるまっていた布の中から小さな影が飛び出す。
「い、犬……!?」
猿のスタンド使いや赤ん坊のスタンド使いがいるのだから、犬のスタンド使いがいたとしてもおかしくはない。ポルナレフの髪をむしゃむしゃと噛む小さな犬に、我慢がならなくなったポルナレフがチャリオッツで切りかかる。
「イギーは簡単に言うと砂のスタンド使いなのじゃよ」
イギーの背後から立ち上った砂は、まるで機械仕掛けの巨大な犬に先住民の仮面をかぶせたような姿だった。チャリオッツの剣をするりと避け、それどころか取り込んで固めてしまう。
「すっごい……!強い!」
愚者のカードの暗示ということもあって、はすっかりイギーを好きになった。愚者には思い入れがあるし、犬も大好きだったからだ。
コーヒー味のチューインガムをくちゃくちゃと噛むイギーに遠くから挨拶する。
「私はっていうんだ。イギー、よろしくね!」
「……」
「やめとけ。この犬、俺達とよろしくするつもりなんかなさそうだぜ」
「イギーは人間には決して心を許さないんじゃよ」
「そうなんですか……。じゃあ気が向いたらよろしくね。たまに撫でさせてね!」
の言葉を聞いているのかいないのか、イギーはぴくり、とあらぬ方向に顔を向けた。
SPW財団のスタッフから物資を受け取る。トランク2つとちょっとした荷物が増えた。ポルナレフとはそれを車の荷台に積むため持ち上げようとして、スタッフの1人が言った「2週間」という日数に気を取られた。
ここに来て、いよいよ期限が迫ってきた。2週間というと、7日が2つである。にはそれがとても短いように思えた。13回眠れば、もうその日が来てしまうのだ。
「DIOの館を訪れた9人の男女だと?」
スタッフの言葉はさらに続き、タロットから外れた新たな刺客の存在をほのめかした。
「ホル・ホースの皇帝を除けば、残っているタロットはDIOの世界だけだ。9人なんて……、アヴドゥルさん、どうですか?」
「い、いや……私にもわからない。9人とは……いったいなんなんだ」
予測のつかない敵の姿に、は改めて気を引き締めた。
進化したペルソナは、やっぱり攻撃の手段を持っていない。にできることは、戦いに傷ついた仲間を癒すことだけなのだ。

たちは車の荷台ですし詰めになっていた。後部座席に座ろうとすると、イギーが激しく唸るのだ。仕方なく、後ろに座っていた4人は荷台に避難した。は花京院とアヴドゥルに挟まれ、大きなあくびをひとつした。窓から見えるのは似たような砂の海ばかりで、変わり映えしなくてつまらない。
「アヴドゥルさん、もたれていいですか?」
「ん?あ、あぁ。構わないが……」
ゆれる車内の動きに任せて、身をかたくしたアヴドゥルの隣に滑り込むと、はそのまま目を閉じた。アヴドゥルさんの匂いすはすは、なんて思ってはいなかったが、アヴドゥルの拒みきれないやさしさに付け込む悪戯心はあった。
、そのまま寝るの?」
「んー?うん、そのつもりだけど、なに?」
「いや……」
花京院は苦笑するアヴドゥルの顔を見て、なんでもない、と言うことにした。その時、ジョセフが車のブレーキを強く踏んだ。
車はつんのめるように停まり、したたかに頭を後部座席の背もたれに打ちつけたポルナレフが声をあげる。
「な、なんだ!?」
も目を開けて、ジョセフたちに続いて砂地に降りる。車の真正面に、ヘリコプターが墜落していた。
機体は倒れ、プロペラは曲がっていたが、攻撃を受けて墜落させられたというわけではなさそうだった。音も何も聞こえなかったということは、ジョセフの車が砂丘を越えるよりも前に墜ちたのだろう。立ち竦んでいたは、はっと気づいて砂を蹴った。
!気をつけろ、敵スタンドの攻撃の可能性がある!」
気をつけたところでにはスタンドが視えない。
窓から上半身を出し、機体をひっかくように硬直したスタッフを見つけても、はペルソナを出そうとはしなかった。ひと目見てわかる。死んでいるのだ。承太郎が死体の顔を横向けると、その口からだばだばと水がこぼれた。
裏に回ると、汗にまみれて倒れながらも、浅く呼吸を繰り返している男がいた。生きている。は召喚器でこめかみを迅速に撃ち抜くと、回復の言葉を唱える。墜落の時についた傷はある程度治癒できたものの、長く砂漠に倒れていたせいか、男はひどく消耗していた。
「み、……ず……」
手を伸ばす男に応えて、はポルナレフから受け取った水筒のキャップを開けた。わずかに傾けると、その中身は男にもよく見えた。
「ヒイイイイイ!水が!襲ってくるウゥゥゥウ!!」
顔を恐怖で引きつらせた男の断末魔が水筒の中に吸い込まれた。は誰よりも近い位置でそれを見てしまった。男の口元が歪んだと思ったら、首から上がちぎれてしまったのだ。ほとばしる血は、大きく跳ね飛んだ水筒の口につながり、砂や服に飛び散った。男の頭が水筒の中に消えてしまったようだった。
!」
頬にかかった血の暖かさに、逃げなければいけないと思った。その声が誰のものかを判別する前に、は弾かれるように立ち上がり、声のした方に駆け寄った。ローブが包むようにを迎え、素早く砂地に伏せさせる。の激しく上下する肩の動きがアヴドゥルにはよくわかった。
「アヴドゥル、スタンド使いを見たか?」
「いえ、ジョースターさん、私には何も……」
隣に伏せていたジョセフに首を振ると、アヴドゥルは承太郎を見た。双眼鏡を構える承太郎も、何も見えないと言う。
「ポルナレフ、あの水筒に攻撃してみろ」
「はぁ!?い、今、あの中にパイロットの頭が吸い込まれたんだぜ!?俺は嫌だね!お前がやれよ!エメラルドスプラッシュならこっからでもできるだろ!」
「僕だっていやだ!」
「自分が嫌なことを人にやらせんな!どういう性格してんだァテメェは!」
ぎゃあぎゃあと大きく騒ぐ2人のすぐ近くに、水がにじんだ。砂漠には不釣り合いな小さな水たまりは徐々に大きくなり、花京院が気づくころにはまるで砂地から手が生えたように水が形を作っていた。には見えない水だった。
水の手は鋭く2本の筋を生み出すと、鋭利なそれで花京院の両目を切り裂いた。倒れた花京院の周りにすぐ血の溜まりができる。
ポルナレフの声で顔を上げたは、仰向けになり目から血を流す花京院に、ついさっき自分が受けたショックを追体験しているような気になった。
「か、花京院が目をやられた!、早く治療してくれ―――ッ!」
は、アヴドゥルの腕の下から這い出ると、花京院に駆け寄った。
「いかん!、危険じゃ!」
「(危険なのはわかってる、でも……治さなきゃ!)」
走りながら引き金を引く。現れた青年の影に治療を指示すると、花京院の目から流れていた血が止まった。
「やばい……ポルナレフともやられる」
承太郎の呟きは電子音にかき消された。以外に見えていた水はポルナレフから興味を失ったように、パイロットの死体を切り裂いた。音に反応しているのだと気づいたのは承太郎だった。裏付けるように、花京院を抱えて走るポルナレフの足音に反応した水が彼の足を切り裂いた。ジョセフに引き上げられた3人は、車の上でじっと息を殺す。
車から放り出された時、が落ちたのはイギーの隣だった。
アヴドゥルが首から血を流した時、はよっぽど駆け寄って治癒を施そうかと思った。しかし、ジョセフの目がそうさせなかった。彼は無言で、にやめるよう訴えた。にだって、それがどんなに危険な行為なのかはわかっている。花京院の時とは違い、音に反応するスタンドだと知っているからこそ、動くことが危険なのだ。にはスタンドが視えない。だがそれは、スタンドの攻撃を受けないということではないのだ。
承太郎がイギーを使って敵に接近した時、はようやく立ち上がることを許された。服についた砂を払うこともせず、一目散にアヴドゥルの隣に行くと、1度目で血を止め、2度目で傷をふさいだ。それから、思い出したように、口元に手をかざして呼吸を確認した。
「い、生きてる……」
深い安堵のため息がこぼれた。

病院に搬送されたのは花京院だけだった。負傷した部分が目だということで、専門的な治療が求められたのだ。対してアヴドゥルは、傷が軽かったこともあり、ジョセフの運転する車に乗っていた。
「にしても、がいてよかったぜ……」
「うむ、の力にはいつも助けられている」
「世話になったことがないのは承太郎くらいじゃないか?」
「ジョセフさんのことも治療した覚えがないですよ、アヴドゥルさん」
はアヴドゥルの首に残った傷を見て、膝の上で手を握りしめる。ディア――のペルソナが持つ回復の力は、その系統の中でも一番弱いものだ。ペルソナが進化し、以前とは違うスキルを使えるようになったが、これは成長しなかった。程度にもよるが、傷をふさぐことはできても、その痕までは消せないのだ。
「どうしたんだ、?」
何やら考え込んでいるに、アヴドゥルが訊ねた。は顎に指を寄せて、真剣な声で答えた。
「アヴドゥルさん、傷跡を治せなくてすみません」
「なんだ、そんなことか。気にしな……」
「でも、私が責任を取ってアヴドゥルさんを娶りますから!安心してください!」
「ブヒャッ」
ポルナレフが水を噴き出した。
、何から……指摘すればいいのか?」
「ん?偕老同穴の契りを結びましょう、の方がいいですか?」
「カイロウドウケツノチギリってなんだ?」
ポルナレフの質問に、は「仲良しの夫婦になる約束をしようってこと」と答えた。
「君はそういう言葉をどこで覚えるんだ?」
「好きな人にプロポーズする時のためにいろいろ調べてるんですよ!」
好きな人、という響きに、アヴドゥルは続く戦いの中で意識しないようにしていたの言葉を思い出した。ぐっと言葉に詰まってしまう。そんなアヴドゥルにへらへらと笑いかけて、あまつさえすり寄ったに、どうしたらいいのかがわからなくなる。
「おー、アヴドゥルさんの匂いがする。前から思ってたんですけど、良い匂いですよね」
「……あ、あぁ、私が香り袋を持っているからじゃあないか?」
「へえ……。じゃあ、同じやつを枕に仕込んだら寝てる時でもアヴドゥルさんの匂いが楽しめるという……」
「……」
なるほどなー、と呟いて、は目を閉じてしまう。アヴドゥルから送られる戸惑いの視線をポルナレフは無視した。