みかん

会話文だけ
「みんなー、みかん食べるー?」
「みかんてなに?」
「これ」
「オレンジみたいな?」
「みたいな」
「外の皮薄いな」
「指で剥けるわよ」
「マジだ。おー、割れる。まっぷたつに割るのおもしれェな」
「実を包んでる袋も食べられるよ」
「へえ。ポルポ、これ好きなの?」
「うん。大好き。甘いのと酸っぱいのがあるから、酸っぱかったら我慢するか甘いひとと半分こしてね」
「……酸っぺえ」
「ギアッチョが当たったか。メローネは?」
「俺のは甘いけど、それより気になるのはさ、なんでポルポ、みかん揉んでるの?」
「ものすげえ手馴れてんな」
「みかん好きだからね。揉むと、白いしぶしぶ……これすごいカッコいい名前だったと思うんだけど」
「アルベドだ」
「アルベドだってさ」
「リーダーはみかんにも詳しいンか」
「日本の冬といえばこれだからな」
「凝り始めるとうるせえんだよなリゾット」
「着々と情報集めっからなー。お、ジェラートこれ甘いぜ」
「ん。マジだ。これ一番甘いんじゃね?おっと、ソルベのみかんは誰にもやらねえぜ?」
「いらねえよ」
「いるか!!」
「なによりもいらねえ」
「兄貴、俺のやつも甘いです!」
「よかったな、ペッシ。いい、お前が全部食え」
「はい!」
「(ハイハイハイ)」
「そうそう、みかんを揉むと、外皮にくっついてるアルベドたんが取れやすくなるのと、甘みが増す気がするの。だから日本人、みんな揉む」
「へェー。もいっこ取ってくれや」
「すぐそこにあるんだから自分で取れよ。ほら」
「そう言いつつ取ってあげるイルーゾォちゃんやっさしー」
「うるせえメローネ、ちゃんづけすんな」
「さすがに10人いると、みかんこれだけじゃ足りないわね。箱で送られてきたからもってく、ん?」
「食べ比べてみろ」
「うん。うわっすっぱ!!」
「かなり酸っぱかった」
「無表情で食べてたから油断した!!すっぱー!きゅーっとする!!」
「いや、噛んだ瞬間ちょっと止まってたぜこいつ」
「見損ねたー……!」
「おいオメー、箱どこだ?」
「ギアッチョ持ってきてくれんの?あったまんないように廊下に出してあるよ」
「ん」
「珍しーなァ、気に入ったンか?」
「剥く感覚が癖ンなる」
「確かにね。揉んだら余計癖になるぜ、これ。ぷつぷつぷつ、って維管束――アルベドだっけ?これが剥がれて切れてく感じが特に」
「お前が言うと怪しくなる」

「あ、ギアッチョ手見せてー」
「あ?……うお」
「あはは、やっぱり黄色くなってる」
「マジか?……マジだ。へェー、俺もだ」
「いっぱい食べてるとこうなるのよね。私は爪がきいろい」
「さっきから皮アート量産してっからだよ」
「裸になったみかんがまだ3つ転がってんぞ」
「ちゃんと食べるからイイじゃん?」
「半分はリーダーがだろ」
「なあポルポ、この腕時計の皮貰ってもいいか?」
「いいよー」
「俺は怪獣ー」
「どうぞー」
「俺もやってみようかな」
「本もってこようか?」
「本があんのか」
「うん。他のも色々載ってるよ。待ってて」

「プロシュートのが一番かわいいね」
「可愛さなんてどこで見てんだ?」
「なんとなく」
「そうかよ」

「プロシュートこれ食べてみ」
「あ?……甘いな」
「でしょ!?これ私史上今までで一番甘い!」
「なんで俺に食わせたんだ?」
「なんとなく」
「そうかよ」

「おいポルポ」
「ん?あーん……甘い!」
「さっきのより甘かった」
「わあー、すごい!やっぱり揉み加減か?」
「さあな」
「ありがとー。うんこれおいしい」
「(プロシュートがあぁいうことするの珍しいよな)」
「(ポルポ流に言うと、デレたってやつか?)」
「(ぶばっ!!いままであいつツンだったのかよ!)」
「(やべえみかん詰まらせるかと思った!)」
「隣にこいつらいるとうるせエ」
「ドンマイギアッチョ」

「お」
「ん?」
「リゾット、これ味見してみ」
「……」
「どう?」
「……ふつうだな」
「いやいや、かなり酸っぱい顔してるよ。眉間にちょっと力こもってるよ。口ではそんなことを言っていても身体は正直だよ」
「げばあぁっ!!」
「ゴホゲホガガッハ!!ポルポ、みかん食ってる時は反則だっておにいさん言っただっひゃひゃひゃひゃ!!」
「あっはっはっはっは!!もうだめあっはっはっは!!」