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は道端の石に躓いた。
じりじりと照りつける太陽は砂地を熱する。承太郎は小柄な身体が傾いだのを見てすぐに彼女の―――彼の腕を掴んだ。
「痛いな、もっと丁寧に助けてよ」
礼の一つも言わず、は文句ばかりだ。ポルナレフが飽きずに苦言を呈したが、はどこ吹く風か、道端の屋台で売られている装飾品に目をやっていた。
「あの髪飾りなんかはに似合いそうじゃのォー」
「へえ、どれ?」
光を反射してきらりと光る、ピンク色のガラス玉がつけられた髪飾りだった。
ジョセフはの肩を馴れ馴れしく抱いて屋台に近づく。も「そう言うなら買ってくれるんだろ?」と可愛らしく微笑んでジョセフにしなだれかかった。
仲の良い祖父と孫の関係に見えたのか、店のあるじは人好きのする顔で手を揉んだ。
「どうです、お土産に一つ。お嬢さんにすごく似合っていますよ」
「そうかい?つけてみてもいい?」
「どうぞどうぞ。鏡もありますよ」
異国の言葉だったが、ジョセフに手招きをされたアヴドゥルが通訳をして問題なく会話が進む。
柔らかい色合いの髪に、ガラス玉はよく似合っていた。ぱちりと金具を嵌め、は同行者を振り返る。
「似合うだろ」
青いリボンとのコントラストが、異論なく頷いてしまうほどに似合っていた。

自分の魅力を知り尽くす少年は手に入れた髪飾りを陽に透かして見た。細かい彫刻が施されている部分もあり、指先には小さなくぼみを感じる。
「承太郎も僕に似合うと思う?」
承太郎は帽子の下から横目でを見て、「そうかもな」と寛容な言葉を発した。その声は唇の端も持ち上げない不愛想なものだ。
は気にせず、髪飾りをポケットにしまう。その手が滑って、髪飾りは車の床に落ちてしまった。
「まったく、汚れちゃうじゃないか」
可愛い唇は誰にともない文句を吐いた。背を曲げて床の髪飾りを拾い上げる手つきは探るようで、おぼつかなかった。
「承太郎、拾って」
「それくらいテメーでやれ」
「拾ってってば。拾ってくれなきゃ承太郎が可愛かった時のこと、全部あいつらにバラすからな」
「……」
承太郎はフゥとため息を吐いて、咥えていた煙草を指に挟んだ。身を屈めてアクセサリーを拾い上げ、に渡す。
「素直にやればいいんだよ」
愛くるしく眩しい褒美の笑顔が向けられた。