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ドリーム小説 「何でオメーは俺の傷だけ全然治しちゃくれねぇんだよ!?こんだけ頼んでんのによぉ!?」
「治してやりたいなんてこれっぽっちも思ってないけど、お前が厄介な怪我ばっかりしてくるから悪いんだろ!舌に開いた穴なんて治してやりたくても治せないよ!僕は舌にピアスをつける趣味はないんだ」
「治せよ!それがオメーの役目だろ!?」
「痛くないなら唾でもつけとけよ!」
「唾どころか口ン中だっつうの!」
一行は街中に声を響き渡らせていた。五人の中、主に二人が賑やかに声を立てている。承太郎が呟いた。
「やれやれ……」
花京院とジョセフも同意し、到着したカラチの街をぐるりと見回す。
「昼食でも食べるかのぉ」

ジョセフのひと言から、事態はとんでもない方向に展開した。
承太郎に降伏することを求めたスティーリー・ダンはスタンドを行使しジョセフを人質に取った。生来、人を屈服させるのが好きなたちなのかとはあたりをつける。
人の上に立ち自分の手を汚さずにいたいという思いはと共通するように思われたが、承太郎はそうは思っていなかった。
スティーリー・ダンとの違いは決定的だ。スティーリー・ダンは自分が人類の頂点に立っているとは思っていない。自分の能力で人を自由に従えさせられるとは考えているが、自分が神に祝福されているなどとは欠片も、意識の端にも置いていない。
は違う。自分の可愛さで世界が回っていると思っている。女装に目覚めた時もそうだった。彼の親はの性別を間違えて産んだと思うほど後悔していたが、は自分の性別が間違っているとはまったく考えていない。女性に憧れているわけでもない。
―――可愛い僕が可愛い女の子の恰好をしている。このことがアンバランスな魅力を醸し出すのさ。完璧じゃないからこそ美しい。そうだろ、承太郎。
いつだったか女子のスカートを履いて現れたが自信満々に言っていた言葉を思い出した。
は自分がいれば世界はすべてうまく回ると信じている。そしてそれだけの容姿を持っていた。時代か、性別か。世が世なら傾国の美女としてあがめられるようになっただろう。
それほどの少年が、ある意味で表面上は似通ったスティーリー・ダンを前にして心底嫌そうな顔をしている。幼馴染が冒されるからでも、自分が少女と―――当然だったが―――間違われ肌に手を這わされたからでもない。同属嫌悪だ。
「ありえない。ありえない。こんな自己中心的な考え方をする身勝手な人間がいて良いのか?人をなんでも思い通りにできると思ったら大間違いだ。やり口が汚いんだよ。人質を取るなんてスマートじゃない。自分のカリスマで動かしてこその醍醐味ってものじゃあないか」
ぶつくさと言っているが、そう言うもよっぽどである。
承太郎にぴったりとくっついたは、幼馴染の手の中にある領収書に流れるような達筆である言葉を書き加えた。承太郎が見ると、そこには『身勝手な言動』と書かれていた。
「……意味はわかって使ってるんだろうな?」
「当たり前だろ。バカにしてるのか?」
「してねえ」
承太郎はそれきり何も言わず、史上最低の男に制裁の拳をたたき込んだ。