07
ドリーム小説
承太郎の元に戻って来たは開口一番文句を言った。
「なんだよ、生きてるじゃないか。紛らわしいんだよ」
僕の涙はただじゃないんだと泣いてもいないくせにふてくされている。承太郎はため息もつかずに目を逸らした。いつもの調子を取り戻すとすぐにこれだ。
アヴドゥルは死んではいなかった。額の肉と骨をえぐられた彼はスタープラチナの心臓マッサージでショック状態から回復し、すぐに搬送されたスピードワゴン財団の傘下にある病院で現在絶対安静を強いられている。ベッドに括り付けられて動けないような状態だ。だが言ってしまえば、それだけで済んでいた。
「トイレに行くのも一苦労なんですよ、ジョースターさん。いちいちナースコールを押さなくちゃあいけない。……花京院、笑い事じゃあない」
くすくすと笑い声を殺した花京院は安心していた。
数日のうちに馴染んだのぶうぶうとした文句を受けるアヴドゥルは辟易した様子だったし、あまり快くも思っていないようだった。だが、それを聞くと日常が戻ってきたような気がした。
―――できないって言ってるだろ!!
の叫びを聞いた者は花京院とポルナレフだけだった。花京院の耳からはあの声が離れない。
彼の要求が分不相応なものではなく、もまた自分たちと同じように肉体を賭けて旅をしているのだと呑み込めた今、花京院はのことを前よりも嫌いにはなっていなかった。アヴドゥルが結果的に生きていたこともその想いに拍車をかけた。
「いいかい、僕の前で死ぬなら死ぬって先に言っておいてくれないと困るんだよ。死ぬような傷を治したりしたら僕の綺麗な身体に傷がついちゃうどころか命が危ないだろ。吸い取る傷は調整できないんだよ。僕のスタンドは細かいことには向いていないからね」
「君にそっくりだな」
アヴドゥルがぼそりと呟いた言葉を聞き逃さず、マシンガンよりもうるさい反論がアヴドゥルの傷にちくちくと響く。おざなりに対応すると、は最終的にこう締めくくった。
「僕に文句を言いたい時は承太郎を通すんだ。いいかい?」
「良かねえ。なんで俺がてめーの文句を聞かされなくちゃあならないんだ?」
「僕だって君へのいちゃもんの窓口になってやったことがある。ギブ&テイクさ」
「言葉の意味をわかって使ってんのか?」
「僕が間違ってるっていうの?」
「質問に質問で返すんじゃねえ」
ジョセフが笑った。
笑っていられなかったのはポルナレフだった。
一人、アヴドゥルの無事を知らされていない彼の雰囲気はひどく落ち込んだものだった。
インドから車で出る時になってもポルナレフの気は晴れることなく、の非道な言葉を批判する気力もわかずに沈鬱な表情を保っていた。
生存を知っているなどはもうけろりとしており、隠す気もなく大げさに脚を組んで狭い車のスペースを大きくとっていた。彼女のおかげで、承太郎は荷台に追いやられている。
よくぞ文句を言わずにいられるものだと、ジョセフは孫に感心した。承太郎のイメージとはかなり違った行動だ。承太郎は人に左右されることを嫌い、顎で使われたり鼻先でせせら笑われるようなことには断固として抵抗するタイプかと思っていたのだ。
しかし今、ポルナレフの前でそんなふうな気軽な話題を持ち出せるわけもない。ジョセフは胸の中にそっと疑問をしまって前を向いた。
数分後、つんのめるように停止した車の中で、またもの文句が全員の耳にいたく響く。