ゆらいでくれと祈っても
いばらがテレビに突き刺さり、ザッピングのように音がとぎれとぎれに聞こえてくる。
ジョセフはさらに詳しい情報を得ようとして、画面にうつったたくましい半裸にぎょっと目をむいた。
「こ、これは!」
の目から映像を隠すといった小細工をする時間はなかった。アヴドゥルとジョセフの頭の間から、ははっきりと、男の首筋にある星型の痣を見た。
「ジョセフ・ジョースター……貴様、見ているなッ!」
ばりん、と音を立てて画面が割れる。何もうつさなくなったテレビからハーミットパープルを退き、ジョセフは額に浮いた汗をぬぐう。
「DIOに……バレたか」
「画面越しとはいえ……恐るべき圧力……」
DIOと対面したことのあるアヴドゥルは、押しつぶされるような威圧感と恐怖、甘美な言葉を思い出し、ぶるりと身を震わせた。
そして、もう一人この部屋にいる人物を思い出す。
はいつものように黙りこくっていた。
彼女の視線はテレビのヒビに集中していた。アヴドゥルと顔を見合わせ、ジョセフがその視線を遮るように体を動かす。
(まるで、わしの身体を通り抜けているようじゃ)
少女の意識は完全にここにはなかった。改めて目にした悪の存在感に胸を焦がしているのか、恐怖しているのか、黒く塗りつぶされた瞳からは読み取れなかった。
ジョセフがじっと少女の表情に注視していると、彼女はやがて、ほぅ……、とわずかな唇の隙間から吐息を漏らした。どこか、惚けたような、熱い吐息だと思った。
「ちゃん」
そっとにじり寄ったジョセフは、の視界を覆うように、彼女の前に立ちはだかった。アヴドゥルは、老人が少女を闇からすくいあげるように、守るように見えた。
肩に手をかけ、背をかがめての目に自分の視線を合わせる。軽く揺さぶり、もう一度名前を呼ぶと、はハッとジョセフを見た。
「そうじゃ。……君にとって、奴がどういう存在なのかはわからん。だが、これだけは覚えておいてほしい。わしらは、君を……ちゃん、君を助けたいんじゃ」
は開いていた唇をそっと閉じた。水底に沈む貝のように、口と共に心まで閉ざしてしまうのか。ジョセフはきゅう、と目を眇める。
「……お気持ちはとてもうれしく思います。ですが、助けてくださるというなら」
静かな部屋に、少女の声はよく通った。答えるのも億劫そうな、低い声だった。
「穏便に死なせてくださるとうれしいです」
ゆるやかに口角を上げ、困ったように呟かれた言葉。
アヴドゥルは、その時のジョセフの表情を知らない。
*
これがDIO……。
記念に写真でも撮りたいくらいだ。
写真といえば四部もそうだっけ。
……そしてやばい、何か言われてたけど聞いてなかった。