命綱のふりをする



花京院は、がアヴドゥルとポルナレフの戦いに飛び込んでいかないかひやひやしながら見ていた。飛行機の中で灰色の塔の老人に殺人を強要していた姿を見るに、なにか死に急いでいる気配を感じたのだ。
の服はSPW財団がジョセフに頼まれて用意したもので、いつでも逃亡を防止できるように、背中に頑丈なリボンがあつらえてある。後ろ手に少女の腕を拘束することも、そのままどこかに縛り付けてしまうことも、駆けだした後ろ姿を引っ張って引き止めることもできる万能のリボンだ。
しかし彼女は、炎と剣戟の戦いにそれほど興味はないようだった。ぼう、と立ち尽くしていたかと思うと、癖なのか腕を組んで、隣に立つジョセフの横顔を眺めている。敵の姿を目に焼き付けているのだろうか?彼女は突然現れたこと以外、ジョースターに危害という危害を加えていなかったが、一瞬目を離した隙に空条家の台所で包丁を手にしていたことを思い出すと、油断できる存在とも思えない。
「さっきからわしの顔に何かついとるかの?」
「……いえ、別に何も」
花京院は驚いた。この女の子が「はい」と「いいえ」以外の言葉を長く紡いだのは久しぶりだったからだ。
ジョセフもそれに気をよくしたのか、の華奢すぎる肩にサッと腕を回して抱き寄せたりしている。
あり得ないことだが、武器を仕込んでいるかもしれない相手にそんなことができる好々爺の据わり切った肝に、花京院は細く息を吐きだした。
「あのポルナレフを知っておるか?」
「……ええ」
知っている、と答えた!
花京院は心臓がうるさく鳴りだすのを感じた。肉の芽を抜かれた花京院の前でも、彼女は無感動に頷いて見せたのだ。そして、ポルナレフのことも知っているという。
「どこで知ったのじゃ?」
「……あなたの知らないところで、としか」

決着がついて、倒れたポルナレフから肉の芽を抜き取るとき、承太郎はが邪魔をするのではないかと考えた。
「誰も俺に触るなよ」
ただ一人に向けて忠告してから、スタープラチナで芽を摘まむ。引き抜き、それが滅されるまで、承太郎は息を殺していた。
背後の小さな気配は緩慢に頸を動かすと、承太郎の手元を覗き込むアヴドゥルに視線を向けていた。まるでその怪我を惜しむように、自分の身体についたものであればよいと願うように、ゆううつなため息がきこえた。




*
イケメンおじいちゃんだなあ。
こんな状況じゃなければなあ。
ああ早く帰りたい。