ポルポ・ノタルジャコーモ(略)の提案
私が入院する理由は特になかった。聖マンゴのベッドをお借りしているのは念の為だ。太ももの裂傷なんてダンブルドア先生に比べたら軽い軽い。あの人は呪いのせいで衰弱していたからね、普通に、なんの手続きもないままVIP用に似た厳重警備の個室が与えられベッドに縛り付けられている。怖いもの知らずの癒者にくどくどとお説教をされているのを見た。どうしてもっと早く来なかったんですかと言われ、まさかわしは死ぬつもりだったんじゃよかくかくしかじかニワトコの杖、と説明するわけにもいかないダンブルドアは苦笑して、自分に繋がれた魔法界の点滴台を見つめていた。
クラッブ、ゴイル両名の手引きにより『必要の部屋』の秘密のキャビネットからホグワーツに侵入した死喰い人の襲撃を受けたホグワーツは、その盤石と思われていた防衛措置の抜け穴にてんやわんやの騒ぎとなっていた。主に教師陣が。
死喰い人たちの間では、そしてハリー君の中では、ダンブルドアは死んだものと思われていたようだった。死喰い人はともかくハリー君はリゾットに連れられて聖マンゴを訪れ、名札のない病室に通された時、涙を流してダンブルドアに抱き付いていた、らしい。今までダンブルドア先生の治療に携わっていたということでお馴染みの顔として呼ばれ、同席していたペッシちゃんが言っていた。
どうしてリゾットが彼を連れて来たのかというと、それはただのついでだったそうだ。私のお見舞いに行こうとしていたところにハリー君がやって来て、ポルポのお見舞いに連れて行ってくださいと頼まれたとのこと。お前が本当に今会いたいと思っている人間を優先した方が良い、と言ったか言わなかったかは知らないが、リゾットは私の病室よりも先にダンブルドアの病室へ彼を案内した。厳重に警備された病室へ行くためにはアポイント、魔法薬での変身対策、武器の有無を確認される。ハリー君はそのすべてをクリアし、武器の有無で引っかかるため見送るに留めたリゾットを何度も振り返りながらその病室の扉を開けたそうだ。
「痛くねェか?」
「痛いよ」
「あー……」
ホルマジオは困ったように眉尻を下げた。申し訳なさが滲み出ている。そういう嗜好のある人ならもっと苛めたくなるんじゃないだろうか。
「下手くそ。お前、腕落ちたんじゃねえの」
辛辣な言葉を吐いたのはイルーゾォで、彼は病室の鏡を通ってここまでやって来た。鏡の中を通る人間なんてこいつくらいなので、誰にも見咎められることなく聖マンゴへやって来られるということだ。とんだチートだよ。
「焦って手元が狂っちまったかなァ?まあぶっ刺さった方が効果が高ェのはマジだぜ」
リトル・フィートの名を冠する呪文をかけた魔法具ナイフを投擲し、私の太ももとダンブルドアの腕を切り裂き私たちを魔法の比でなく"縮小"させてくれたホルマジオのおかげで、そして私の勇気あるアレストモメンタムのおかげで私たちは生き延びた。本当にあんなこと二度とあって欲しくないわ。思い出すたびにうんざりした表情になってしまう。ハリー君恨むぞ、君のおかげで死にかけた。
だがしかしまあ、あれも"幸運"の一環だったんだろう。仕方がない話なのは解るから、そこまでネチネチとした追及も出来ない。なぜならあの時の世界はハリー君の為に回っており、私たちは彼の"最善"をサポートする役割だけを負っていたのだから。魔法薬怖い。近寄らんとこ。
「だけど助かったよ、本当にありがとう」
「あのジジイを見捨てちまえばもっと簡単だったんじゃねえの?」
「いやいやいや……え?いや……ええ?」
そんなハッキリ言っちゃう?確かに簡単だっただろうけど、魔法界にとっては大きな損失だよ。それとも何か、イルーゾォ。私以上に大切なものなんてないって素面で言ってくれるのか?抱きしめてキスすればいい?
「バッカ違えよ!……違くはねえけど!その顔やめろ!」
違わないのか。もう可愛すぎて食べてしまいたい。個人主義っぽいイルーゾォがこうして仲間意識を持ち、身内の喪失を厭っていると知ると、それがどんなタイミングであれ血の巡りがよくなって身体がぽかぽかしてくる。イテテテテ、血の巡りが良くなると傷が痛む。お癒者さんから、魔法で治すまでもないから身体に任せましょうねってニコリと微笑みかけられたけど、出来れば魔法で治療してもらいたかったね。なんでそういうところは自然治癒に任せちゃうんだよ。なんでも魔法で解決してるくせに変なところで常識的な魔法界。
包帯の巻かれた太ももをタオルケット越しにさすって、記憶を追う。
「……スネイプ先生はどうなった?」
リゾットに訊ねる。
前線に出ていたのはプロシュートの方が先だったというけれど(教え子たちを守る為に武具をふるったというところは、変わりようもない彼らしくて素敵だと思ったよ)リゾットはスネイプ先生との繋がりも強い。なにせ、セブルス、とあのリゾットが名前で呼ぶ相手だ。そこに他意がないことは知っているけどさ。やっぱり5年も同じ教室で教鞭を取り同じ教務室で仕事をしていた仲なのだから、きっとリゾットなら的確に答えてくれるのではないかと思ったのだ。
「セブルスは去った。恐らく"奴"の所へ戻ったんだろう。死喰い人はダンブルドアが死んだと思い込み、セブルスはダンブルドアを殺した者として認識されているようだ」
その辺りは変わらないのか。
だけど、と目を動かす。ソルベとジェラートが剥いてくれた林檎が少し酸化していた。食べておく。
死喰い人がダンブルドアの死を報告しても、ダンブルドアが生存していることはすぐに解るだろう。ダンブルドアは聖マンゴに収容され、埋葬は行われていない。彼ほどの人物ならすぐにでも葬儀が執り行われるはずだった。そうするとスネイプ先生の立場は危ういものになって来る。わざと外したと思われたら最悪だ。そんなことはないんだけどね。めっちゃ的確に狙われていたからね。
「七年間ずっと教えてくれるって言ってたのになあ……」
厳密に言えば正確にそう言われたわけじゃあないし、こうなると"知って"はいたけどさ。改めて考えてみるとハリー君の"幸運"の中に、当然ながらスネイプ先生の存在は入っていなかったわけで。いや、つらい。これはつらい。
「そういえば、ホルマジオはよく私たちを小さくしようって思ったよね?」
風の抵抗の話か、蟻が地面に落ちても死なない理屈か、それとも。
「どれもあるなァ。ただまあ、なんつーかな。オメーのこったから自分だけじゃなくて相手も助けようとすんだろーなと思ったんだよ。だがオメーの魔法力じゃア大人二人分を支える力はねェかもしれねーだろ?形と重さの問題なら、それを解消してやればなんとかなるんじゃねェかと……ま、そんなカンジだわ」
結果的にものごっつ的確だったわけですね。本当、重ね重ねありがとう。感謝の気持ちでいっぱいでご飯とおやつしか喉を通らないよ。
「全部食ってるだろそれ!!」
ツッコミをありがとう、イルーゾォ。
仕事を終えたプロシュートが定時明けに合流したので、リゾットとプロシュートの二人に付き添われてダンブルドア先生の病室を訪ねる。
"死ぬはずの"老人は、床に伏せたまま億劫そうに黒ずんだ手を持ち上げた。ハリー君が励ますように手を握ると、動かない手が握り返そうとしたように見えた。
「これも君の"幸運"のおかげなのかもしれん」
「きっとそうです、先生。僕にとって先生が死ぬことは何も言えないくらいの"不幸"ですから」
「そうじゃな。……しかしわしにとっては幸運ではなかった。……今、もはや君たちに伝えておくべきじゃろう。ハリー、ポルポ。そしてポルポを守るリゾット、プロシュート。君たちをわしとハリーの問題にここまで巻き込んでしまった以上、言わずにおるのはあまりにも酷じゃ。君たちは否応なしに、これからの事態に巻き込まれる。ハリーはヴォルデモートとの対決に。ポルポは奴がリゾットを手に入れる為に。リゾットとプロシュートはポルポを守るがために」
どうでもいいけど"わしとハリーの問題"ってなんか痴話げんか的なニュアンスに聞こえるね。ごめん雑念。
ダンブルドアは片時も離さなかった杖を取り出した。目立つ節がいくつもある細く長い杖は、今のダンブルドアには不釣り合いなほど渇いた生命力に満ちていた。
「死の秘宝、というものを聞いたことがあるかね?わしの著書を読んだことは?」
ハリー君は気まずそうに首を振る。ダンブルドアに気にした様子はなかった。ゆっくりとこちらを見た校長に、私たちは首を縦に動かした。
死の秘宝は三つあり、それをすべて手に入れれば、その人は"死"を克服出来ると言われている。それが『吟遊詩人ビードルの物語』に書かれていたおとぎ話のような忠実であり、ペベレル三兄弟がこの世にもたらした強大な影響だ。
水を、と請われ、私は水差しに水を移した。口元に運んで差し出すと、ダンブルドアは私の手にそれを預けたままストローを咥えた。
喉を潤した彼は"死の秘宝"の、忠実に基づいた御伽噺を一つひとつ丁寧に語った。三兄弟の物語はハリー君の興味を誘い、透明マントのくだりでは彼をとても驚かせた。
「では、先生はすでに三つの秘宝を手に入れているということですか」
「いや、いや。その内二つは……、……一つ、透明マントは君のものじゃ。そしてわしは後のことを君に託そうと決めた時、蘇りの石を君への相続物へ指定した。今それは信頼出来る者に預けてある。時が来れば、魔法大臣に渡され、君たちに贈られるはずじゃった。すなわちわしが所有しているのはこの杖だけじゃ」
ダンブルドアは気軽な様子でハリー君にニワトコの杖を手渡した。神妙に受け取ったハリー君はそっと木に触れ、軽いですね、と呟いた。軽いのか。おねえさんにも触らしてよ。
許可をもらって触らせてもらった"ぼくのかんがえたさいきょうのつえ"は、ぎっしり中身の詰まった木がぱさぱさになったような古びた触り心地だった。軽い、とハリー君は言ったが、本体はそこまで軽くもない。長さの割りには重いくらいだ。ハリー君が"軽い"と言ったのは、きっとこの杖のために争い、消えて行った命を思ってのことなのだろう。流れた血の多さを思えば、こんな杖一本、軽いものだ。
リゾットはともかく、プロシュートもそれほど興味を示した様子はなかった。そのままダンブルドアに杖を返す。デザインが趣味じゃないとかだったら可愛くて震える。
「わしはこれの所有権を、わしと共に葬り去ろうと考えていた」
その試みは失敗したんですけどね。どうしたらいいんでしょうね、今後。
「シリウスがもたらした情報によると、ゴドリックの谷でとある人物が亡くなっていたそうじゃ。わしはその人物から、ヴォルデモートがグリンデルバルドの存在に行き着いたと見ておる。グリンデルバルドとはわしがニワトコの杖を奪った相手で、今はアズカバンに投獄されておる。ヴォルデモートがグリンデルバルドからニワトコの杖の所有者に辿り着くのは時間の問題じゃろう」
もしかすると、もうすでに。
言葉にはしなかったが、ダンブルドアの言いたいことは全員に理解出来た。ヴォルデモートはダンブルドアの杖を狙いに来る。必ず、さいきょうのつえを手に入れる為に策を弄するはずだ。その所有権を奪い取りに聖マンゴを襲撃することも厭わないだろう。
「グリンデルバルドは旧友じゃあなかったのか?友の為に口を噤む可能性は?」
「希望的観測じゃ。常に最悪の事態を想定せねばならぬ」
「だろうな」
プロシュートはあっさり同意した。一応、言ってみただけだったようだ。どちらにしてもヴォルデモートがグリンデルバルドをニワトコの杖の過去の持ち主だったと断定した今となっては、グリンデルバルドに数十年前に勝利したダンブルドアが現在の持ち主であると当たりをつけるのは当然の帰結だろう。
ダンブルドアはさらに語った。所有権を葬り去る為、スネイプ先生に自分を殺すよう依頼したことを。"勝負"を起こさないままに死を選ぶことで、ニワトコの杖の問題だけでなく、スネイプ先生の―――そう、これも語られてしまったのだけど、スネイプ先生のスパイとしての地位を確固たるものにすることを。ハリー君は沈黙していた。えっこの人ひどすぎィ。そんな顔をして、スネイプ先生への印象ががらがらと崩れ、自分を陰ながら守ってくれていた人というインパクトあるレッテルをどう貼り付けていいものか悩んでいるようだった。
「折っちゃダメなんですか?」
「……」
気軽な気持ちで提案してみる。ダンブルドアはまじまじと私を見つめた。君は冗談で言っておるのか本気なのかわからんのうと言われた。いや、私はいつでも強気に本気、素敵に無敵、元気に勇気ですよ。神風怪盗ポルポ、神に遣わされ只今参上。
「その杖は帝王さんの手に渡ってはいけないものなんですよね。この世にある限りその危険はつきまといます。なら、彼の目の前でブチ折ってやれば解りやすくていいんじゃないかと思ったんですけど」
「死の秘宝だよ、ポルポ。そう簡単に壊せるとは思えない……」
「この世に出来ないことなんてないのよ、ハリー君」
ドヤっておいた。結構あるんですけどね、出来ないこと。
「"所有者"と認められていない人間に無理やり行使されたら、プライドの高い杖のことだし、いっそ死んだ方がましと思うかもしれないよ」
「それを考えなかったわけではないんじゃよ」
閉じられたままの扉を確認し人除けの魔法が正しくかかっていることを見ると、ダンブルドアはニワトコの杖をそっと懐にしまい込んだ。
「ただ、これは切り札でもあるのじゃ。最強の杖と呼ばれるものがこちらの陣営にある可能性を思う限り、奴は迂闊に手出しを出来ぬ」
「だがそれは"最強の杖"と"最強の魔法使い"のカードが揃って初めて発生する新たな抑止力だろう。ポッターがニワトコの杖を持っていると言われれば帝王はそれを略奪しにやって来るかもしれないが、ダンブルドアが持っているからこそ、奴はグリンデルバルドの存在を知ってもう随分と時間が経っているはずなのにこちらに近づけずにいる。迂闊に手出しを出来ないのはダンブルドアの存在があるからこそではないのか?現に、ニワトコの杖をダンブルドアが持っていると知らなくても奴は不死鳥の陣営に手を出して来なかった。真実抑止力であり切り札として使われているのはニワトコの杖ではない」
「逆にニワトコの杖の存在は手出しを誘いますよね。ダンブルドア先生に"どうしても"近づく理由が出来る。肉薄しなければ奪えないと言うのなら、ヴォルデモートはダンブルドア先生からそれを掠奪する為にこちらへ接触してくるんじゃないですか?今までの均衡が崩れるのは、ニワトコの杖の存在が明らかになったからで、もしかすると今回のホグワーツ襲撃もそのことがあったから起こったのかもしれません。そうすると、切り札としてニワトコの杖を保有しておくことは危険が伴う」
今まで持っていて問題がなかったものをあえて取り出し、武器として行使することは非常に危うい。相手が普通の杖を使っている以上、こちらが力で相手を圧倒しようと考えることは隙を生む。万一のことを考えるのなら、ニワトコの杖を破壊することを考えるべきだ。そうなると、所有権を葬り去ろうとしたダンブルドアの気持ちは理解できる。
しかし、だ。
ダンブルドア先生が死ぬと、事態は悪い方向に転んで行くんじゃあないのかな。
ダンブルドアの死によって、確かにハリー君たちに勇気が齎され、結果的に魔法界に新たな風が吹いたかもしれない。だけどその分損失は大きく、著しく士気が低下したこともまた確かだ。"ダンブルドア"という圧倒的指導者の欠落は、あんな形じゃなくても良かったはずだ。それこそきちんと次代に場を譲る死に方である方が、ダンブルドア自身が"死を選んだ"理由を明言し死ぬ方が禍根は残らない。もちろんニワトコの杖のことは伏せておくが、もう余命がないんだよねてへぺろ、くらいは暴露しちゃって自然死を迎えて欲しいところだ。ついでに信頼できる人たちにきちんとした説明をしてほしい。そして出来るならニワトコの杖を破壊して欲しい。普通の杖バーサス普通の杖だったら単純に魔力と気力の勝負に持ち込める。ヴォルデモートは必ずハリー君と一騎打ちをするだろうし、ヴォルデモート自身は兄弟杖ということで自分の大切な杖を捨てるはずだ。そして忠誠心の移っていない普通の、誰かの杖を使う。それを知っているのは私だけだが、そうなるとハリー君が勝利する可能性の方がずっと高い。
だから目の前でね、ヴォルデモートが見ている前でドヤ顔で杖をブチ折ってやれば多少は気分がスカッとするんじゃないかなって思ったのよね。
あとさあ、ちょっと話しはズレるんだけどね。
「スネイプ先生が不憫すぎません?」
だってダンブルドアがあのまま死んでしまっていたら完全に戻れなくなっているぜ。戻る気なんてなかったんだろうけど、今まで捨て身で行動してきた結果がそんなのだなんて、あまりにもハイリスクローリターンじゃなイカ?
「……そう、だよね……。……スネイプのことを疑っていた僕が言うのも何だけど……多くの人から疑われて、……だけどダンブルドア先生の言う通りなら、……あっあの、疑っているわけではないんですけど、……自分からその道を……なぜ、スネイプはなぜそんな過酷な道を選んだんですか、先生」
「私たちいない方が良い?」
「そうだな、邪魔するつもりはねえ。セブルスの個人的な話をするなら俺たちは出て行くぜ」
「……リゾットは何か彼から聞いたことはないかね?君たちは特別親しかったじゃろう?」
まさかのダンブルドア公認仲良し魔法薬学教授組。なんなんだ。仲良しじゃねえか。可愛いな。ダンブルドア先生がそう判断するに至ったエピソード詳しく。
「いつも並んで歩いて居ったからのう。セブルスにも友人が出来たかと安心したのをよう憶えておる」
どこまでもスネイプ先生が可哀想な回答だった。
「俺はそこまで深い話をセブルスとした憶えはない。ただ、奴は己に課された役目を"贖罪"の証だと言っていた」
それ深い話って言うんだよリゾット。スネイプ先生がそこまで話すってよほどのことですよ。リゾットのコミュ力が爆発しているのかそれとも母性オーラにやられてしまったのか、やっぱりその辺り詳しく欲しいんだけどここで根掘り葉掘り質問攻めにするのも空気をリーディング出来ていないように見えるだろう。実際に空気をリーディング出来てない行いだしな。やらないよ。やりたいけどやらないよ。
ダンブルドア先生は再び水を求めた。私が水差しを差し出すと、ストローを咥えて、さっきと同じようにちゅうちゅうと吸い上げた。
私たちが出て行く必要はないと言って、彼は語り始める。今となっては知る人間は多い方が良いと。信頼できる君たちならばいつかセブルスの助けになるかもしれぬと、ペベレル三兄弟の物語よりもずっとヘビーでずっとシリアスでずっと過酷なセブルス・スネイプの物語を語り始める。本来なら、ハリー君が彼の記憶を受け取って"見る"はずの出来事を、断片的に、しかし解りやすく。
なんていうか、あの、けしかけたのは私と言ってもいいんだけど、やっぱりアレですね。本人の知らないところで初恋や恋路を暴露され、隠し通しておきたかっただろう秘密を懇切丁寧に護衛対象に説明されちゃってるスネイプ先生、すごく不憫ですね。