リゾット・ネエロの失敗
ルシウスさんとの文通はアレで終わりになると思っていたのに返信が来てびっくり。仕事してるんじゃないんですか。
詳しくは言えないがこれからグリンゴッツに行ってくるって書いてあって爆笑した。詳しく言ってんじゃねえか。朝食の席で構わずおなかを抱えて絶倒してしまってソルジェラの再来とか言われたけどマジで勘弁してくれ。彼らと一緒は嫌だ。
グリンゴッツってことは、えっと。
やはり死喰い人の、おそらくベラトリックス辺りが預けていた大事な大事なものを奪いに行くのかな。そんなことをしてしまってあっち側に情報は洩れないんだろうか。いいのか?あ、もしかするとポリジュース薬で姿を変えていくのかもしれない。それが妥当だよな。誰に変化するんだろう。普通に考えると金庫の持ち主ベラトリックス本人だけど、ルシウスさんかシリウスのどちらかが女装すると考えただけでニヤニヤが止まらない。いやらしい女ですみません、そういうの大好きなんですよ。もう自分に正直に生きることにした。どんわならい。ルシウスさんが不死鳥になじんでいくのならそれはそれで喜ばしいことだ。なじむ、なじむぞ。ジョースターの血はなじみます。ルシウスさんもなじんでください。
不死鳥といえば、不死鳥のメンバーのことでハリー君から教わって驚いたことがある。結構前の話だ。当然と言えば当然で、残念ながら私が予想できていなかっただけのことなんだろうけど、なんと、ミスターセドリック・ディゴリーが不死鳥の騎士団に加わったらしいのだ。
彼の父親、エイモス・ディゴリーは危険なことに対して積極的な人物ではないと思っていたのだけど気のせいだったのかな。それかセドリック君が猛烈に押しまくったか。セドリック君が参加したということはチョウちゃんももちろん不死鳥側になったのだろうし、着々と騎士団員が増えている。闇の勢力が泣いちゃう。全米も泣いちゃう。セドリック君がここで生きていることがそもそもイレギュラーの結果だから、もう何が何やらわからない。
「他にも増えた人がいるらしいんだけど、それは教えて貰えなかった」
本当、襟首引っ掴んで訊きたいくらいだよ。誰だ。
でもきっと知らない人だわ。私の交友関係って狭いし、興味のない名前は普通そこまで記憶に留まらないじゃない?
クィディッチの練習が始まる頃には、ロン君はすっかり元気になっていた。良い調子でキーパーを勤め上げ、クィディッチの試合本番では実況のルーナちゃんにほわほわした褒め言葉で称えられていた。傍から聞いていて非常に面白い。なんでルーナちゃんを起用したのか凄い気になるんだけど、彼女は早々にマクゴナガル先生のお気に入りの生徒になりそうだ。ユーモラスで邪気がなくフェアな実況は、彼女に害意のない人ならば聞いていてとても楽しいことだろう。
そんなクィディッチの試合で燃えたグリフィンドールを春の気配に似合わない陰湿な空気の中にぶち込むのはやはりこの人、セブルス・スネイプ教授である。彼はこつこつと靴音を鳴らし教室を歩きながら呪文のように授業内容を囁き続ける。私たちはスネイプ先生の話を聞きながら黒板を見てメモを取るのに必死だ。プロシュートが教授の言葉を要約して白墨を滑らせてくれるのだけど、プロシュート先生の簡易的なまとめに頼っているだけではこの授業を乗り切れない。スネイプ先生の重箱の隅を爪楊枝でほじくり返しそこを水で洗い流したのちに熱風で乾燥させるような丁寧極まりない指導によると、私たちの授業は非常に極めてソーマッチワンダフル遅れているので、これくらい厳しくしないとN.E.W.T試験の受験資格も与えられないとのことだ。もちろん受験資格なんてものは大雑把に言ってしまうと年齢制限以外にはないのだけど、スネイプ先生は生徒を苛めるのが大好きだから仕方ない。特にグリフィンドールを。特に特にハリー君を。
「『亡者』と『ゴースト』の違いは何か……ポッター、答えろ」
口元に拳を寄せ、一応、回答者を選ぶそぶりだけは見せたスネイプ先生はやはりポッター君を指名した。彼以外を当てるはずもない。もうここまで来るとハリー君はスネイプ先生に好意を寄せられているんじゃないかと勘違いしてしまうくらいの苛めっぷりだが、これも蜜の味がするささやかな復讐の一環だ。好意なんてものは全く持っていないに違いない。ハリー君にとってはひたすらに迷惑なことだ。
「『ゴースト』は……透けてますね」
グリフィンドール席も、メローネすらも笑っていた。しまりのないへらへらとした表情ではなくガチで。あはははと声を立てて笑ったものだから、ハリー君は顔を赤くして気まずそうに頬を掻く。自分でも答えが的外れだった自覚はあるようだった。
ぺらぺら教科書を捲って該当する部分を探す。亡者とゴーストだったら亡者の方が性質が悪いんじゃなかったっけなー。索引を目で辿っていると、教科書が勝手にバタンと閉じた。顔を上げると、スネイプ先生が杖をこちらに向けていた。
「ミス。我輩は君に教科書で調べろとは指示していない」
「ごめんなさい」
以前に"貴様は英語くらいまともに話せんのかハキハキと喋れハキハキと"と言われたことを思い出し、ここはウケを狙ってハキハキと喋りスネイプ先生をまっすぐな瞳で見つめるべきだそれが周囲の好感度的に最高の答えだと私の中の大いなる父が囁いたけど無視。こんな場面でウケを狙ってもしょうがないだろ。
「ミスターアトマ。ポッターの代わりに答えたまえ」
「セブルス、アトマは二人いる」
プロシュートが注釈を入れた。すっかり忘れていたのか、ドジっ子スネイプ先生は苦々しい表情で腕を組んだ。顎でしゃくるようにもじゃもじゃ君を示す。
「ギアッチョ!答えたまえ」
まさかのギアッチョ指名に教室がかすかにざわついた。そこはいつもの通りメローネだろ。ギアッチョもそう思ったのか、答える声は刺々しかった。俺を巻き込んでんじゃねえよと言いたいのかな。頑張れギアッチョ。普段表舞台に立つことの少ない青年を内心で応援した。親心かな。つらい。
「……『亡者』は呪文で動けるようになった死体だ。生きちゃあいねえ。その魔法使いに言われた仕事をするための人形みてーなもんだ。対して『ゴースト』は魂の痕跡。生きちゃあいねえが自分の意思を持って居やがる。……言ってみりゃあ、ある意味『亡者』は二度殺せるかもしれねえが『ゴースト』は殺せねえ。そんなトコじゃねえの」
「教師に対する態度はなっていないが正解だ。スリザリンに10点」
ここぞとばかりの加点はお見事。
「教科書を開け。今度はミスポルポも開いて宜しい。213ページだ。『磔の呪文』についての記述を読みプロシュート先生の書くことをそれぞれ書き止めるよう」
許可されたので開いた。羊皮紙に書きこんでいた悪戯書きを教科書の表紙で隠して、何食わぬ顔で板書を映し書く。授業中の落書きはお約束だよねえ。でもスネイプ先生に気づかれたら怒られそうなので秘密だ。
うん、秘密だったんだけど、メモした羊皮紙を提出することになってしまったからもろにバレてしまった。結構うまく描けたと思うんですけどとスネイプ先生とプロシュートの似顔絵を開き直って見せつけると、手近にあった教科書でばこんと額を殴られた。もう何度も考えたことだけど、まかり間違ってもスネイプ先生には私の実年齢を―――記憶の年数を暴露できないし読み取らせられないな。こんなんで彼より年上だと言ったら怒りより呆れより先立って同情を寄せられてしまいそうだ。
それにしても、なかなかリゾットに会う機会がない。廊下でばったりすれ違うこともないし(何せ彼の教務室は地下教室にあり、職員室はスリザリン寮と反対の廊下に位置している)授業で私が質問に行くこともない。疑問を抱けばたいていハーマイオニーちゃんか(私はネビル君と一緒にグリフィンドール側で共同調合しているのでね)メローネが教えてくれる。リゾットが女子生徒に告白されたんだってよ、なあんて噂を耳にすることはあってもマジかそれ詳しくと食いつく訳にもいかない。婚約者が嫉妬していると思われたら立場的に不利だ。一見すると圧力をかけているようにも思えなくもなくなくない。そういうのとは無縁で生きていきたい。でもこっそりパンジーに詳細を教えて貰った。なんでもスラグホーン先生が気を利かせて出て行くくらいの情熱だったらしいよ。凄いね。私もそんな感じで誰かに告白してみたいな、と思ってからハッと気づいた。ヨカッターここが家じゃあなくて。恋する気持ちは失われていないのだけど、なぜかパッとその対象にリゾットを思い描けないんだよな。喪女でいた期間が長すぎた。告白といえばイコールスチルゲット。そんな方程式が組み上がる程度には乙女ゲーをプレイして来たので、そちらの方に意識が行ってしまう。あるいはホモ。もうやめたいこんな自分。私の妄想下劣すぎ。
私のお気に入りの空き教室はリュシアン君のお気に入りの空き教室にもなったらしい。昨年、リュシアン君が大泣きして私に抱き付いて来た事件を乗り越えてからというもの、彼は頻繁にそこに出入りしていた。今日も行くんですと自主勉の道具を持った彼はきらきらした笑顔で私の手を引いて廊下を歩く。なんで私まで一緒やねん。勉強を見てほしいんだってさ。もう暖かくなってきたとはいえ、わざわざ談話室から出てあの教室に行くのはちょっぴり億劫だが、子供が行きたいと言っているのだ、聞いてやるのが役目ってものだろう。
私は魔法史が得意なので、ホグワーツ生の大多数が嫌厭し、リュシアン君も多分に漏れず苦手とする魔法界の歴史について出来るだけ解りやすくと心がけて教えてみると、リュシアン君は大げさなくらいに喜んでくれた。
「ポルポ先輩の教え方はとても解りやすいです!」
「そうかな?ありがとうね」
誰かに勉強を教えた経験なんてナランチャにやったことくらいしかないから、そういうふうに評価されるのは新鮮だ。周りに出来過ぎる人たちが集まっているから特にそう思うのかもしれない。私ってどこまでも凡人だよなあおっぱい以外、と授業のある日は毎日のように思っている。あとホルマジオが自分で自分を傷つけてしまって保健室に運ばれるたびに思っている。凡人で良かった、と。余計な好奇心を出してブラックリスト入りするのは勘弁。
誰も来ないような教室のある廊下の一角からお手洗いのある大きな廊下へ出る。用を済ませたついでにどの味のロリポップを舐めようかじっくり考え歩いていると、階段の奥、私が向かうべき方向とは反対の廊下から押し殺した笑い声が聞こえて来た。聞き覚えのある声に振り返る。
工の字になった廊下の向こう側をプロシュートとリゾットが横切っていた。珍しい光景ではないのだけど、今のように油断していた精神テンションで見ると妙に興奮する組み合わせだ。楽しげなプロシュートの横顔に私まで微笑みがこぼれる。良かったねえ、なんだかんだでプロシュートもリーダーのこと好きだもんね。邪な念などなく心底から、どことなく、上司の立場に戻ったように彼らを思った。うんうん、仲良きことは美しきかな。二人はプリキュアならぬ二人はティーチャーマックスハート。以前まではリーダーと仲間という立場だったのに、今は同じ教授補佐という土俵で志を共に歩んでいる。志の下りはテキトーに言ったけど、こういうのってとても良いよね。
見送るつもりだったのだけど、目で追っていたのがいけなかったのか、視線に敏感な彼らは私に気づいてしまった。空気をぶち壊したようで申し訳ないなと思ったが、さっきまでの気安い笑みをぱちんとひっこめたプロシュートは、今度は周囲を確認してからいつも通りCOOL!COOL!COOL!な笑みをたたえてこちらにやって来た。ああっわかるよ、さっきの笑顔はリゾット専用なんだね兄貴。心の中のアラヤが邪なことを囁き始めたので聖杯で蓋をしておく。今はちょっと黙ってて。
「こんな所で何やってやがんだ?サボりか?」
私はマジメだからサボりなんてしたことないぜ。マジメだからね。マジメなんだよ、周囲に塗りつぶされて要らんカモフラージュがなされているだけで私自身はマジメなんだよ。ホントに。
「リュシアン君と一緒に勉強してたのよ。あっちの空き教室で。いっぱいあるでしょ?」
「あー、あるな。だがリュシアン・レスティンとなら談話室で……、……まだ居心地悪ィのか?」
リュシアン君の立場が著しく落ちたことを言っているのだ。一時期に比べ風当たりは弱くなったし、リュシアン君自身も気にしないようになってきているからそこまで居心地が悪いわけではないようなんだけど、なんか、彼は私と一緒に特別な場所で特別な時間を過ごしたいのではないかなと自意識過剰ながら推測をしている。そうとしか思えないくらい楽しそうにニコニコニコニコしてくれているし、居やすい場所で勉強をしたいだけなら私を引っ張る必要もないしね。手近に魔法史を得意とする人がいないだけかもしれないけど、それにしたってあの子魔法史ばっかり勉強しすぎだろ。魔法史にかこつけて私を呼びたいだけなのではと思ってしまうほど、私が近くにいる時は魔法史しかやっていない。大丈夫かそんなんで。
「どうしようもねえな」
まったくだ。私にはどうすることも出来ない。やりたいようにさせてやるのが良いだろうと放置中だ。
「プロシュートとリゾットは何してたの?邪魔しちゃった?」
「ギアッチョのことで少し校長室に呼び出されていた」
答えてくれたのはリゾットだった。
「ギア、……え!?ギアッチョ?」
メローネじゃなくてか?
「あぁ。器物損壊が激しい、と」
「アイアンダースタン……」
"アトマの後継ぎとして闇の勢力に属するのか"と訊ねられるたびにうるせえオメーに関係あんのか放っとけと手近な鎧像を壊していたのが悪かったんだな、うん。納得した。イルーゾォとホルマジオがレパロをかけていたけど、現場を見られて減点されたこともある。絵画の目と耳などから校長に伝わり、リゾットとプロシュートがとばっちりを受けたとしてもおかしくない。
「リゾットが後で注意するってよ」
じゃあスリザリン寮に来るのかな?あ、それとも魔法のモバイルで直接連絡しちゃうんだろうか。出来ればスリザリン寮に来て直接メッ!てしてほしいな。それをRECしたい。
「なあポルポ、こいつが大ポカやらかした話を教えてやろうか?」
話を切り替えたプロシュートを、リゾットが短く名前を呼んで止めようとした。
しかし、プロシュート、と呼ばれても金髪の美丈夫は止まらない。
「良いじゃねぇか、"リゾットちゃん"の"カワイイ"トコロは知りてえよなあ、ポルポ?」
「知りたい知りたい」
「ほらな」
私が釣れたと得意げな顔をしてリゾットの首にガッと腕を回すプロシュート。今私の目が広角レンズになった。
「……そう"可愛く"はないだろう」
顔を逸らしたリゾットをレンズが追う。どこまでも追い続けるよリゾット。
暗にリゾットがゴーサインを出したと都合よく理解したプロシュートは、可笑しさを堪え切れず息を噴き出した。こいつ、朝用事があって起こしに行った俺になんて言ったと思う?
シンキングタイムが与えられたので素早く"可愛い"リゾットを想像してみたが、もう、"朝にリゾットを起こすためリゾットの部屋を訪ねるプロシュート"という言葉面だけが頭を巡ってしまって冷静に考えられなかった。正直に伝えるとリゾットが瞼を下ろしてため息を吐いた。
「リゾッ、ぶふっ、こいつ、俺と、くくっ」
「プロシュート、笑うか喋るかどちらかにしてくれ」
「あーはいはい。笑わなきゃあいいんだろ、笑わなきゃあーよ」
そう言いつつプロシュートはぷすぷすと笑いの吐息を漏らしていた。こっちまで貰い笑いしてしまうしリュシアン君が待っているんで早めにお願いしますね、と言うべきところが次の言葉の衝撃でぶっ飛ぶ。
「夢に見てたのかは知らねえが、こいつ、俺とテメーを一瞬間違えたんだよ。なあリゾットちゃんよォ、言いかけたあのPは俺のPじゃあなかったよなァ?」
えっ。
な、なにそれ。なにそれ。
えっなにそれは。
「確かに"言い間違え"そうになったかもしれないが、そこまで責められるようなことか?」
「責めちゃあいねぇよ。誰にだって間違いはある」
まるでウイスキーグラスを傾けている時のような嫣然とした表情をつくったプロシュートは、リゾットの首に腕を回したまま彼を引き寄せて顔を近づけた。私歓喜。そして困惑のちにドキドキ。えっなにリゾットが私とプロシュートを間違えたの。それは。それって。なにそれ。どんな夢を見ていたのかおねえさんに詳しく教えてほしい。夢の中で会っていたの私たちは?
プロシュートは私にも聞こえるようにわざとらしく囁いた。
「ただ、涼しい顔してなかったことにしようとしてるテメーが"カワイイ"だけだぜ。こいつも今そう思ってるだろーよ」
そうだろ、と同意を求められ、私は床に崩れ落ちたくなるのを必死に我慢しながら頷いた。何度も首肯しているとリゾットがプロシュートを押しのけた。イケメンは押されるままに腕をほどいてリゾットを解放してやる。
「カワイイだろ?」
「めちゃくちゃ可愛い。めちゃくちゃ。ディ・モールト。なんて言えば伝わる?とんでもなくかわいい。尋常じゃない。スーパーウルトラハイパー超弩級に可愛い」
「……言いたいことは伝わっている。落ち着け」
「言葉じゃ足りない!」
どーんとぶつかるように抱き付くと簡単に受け止めてくれたのでウルトラハッピー。ハートのど真ん中をぶち抜かれてしまった。ガチでどんな夢を見ていたんでしょうね。わたし、きになります!でも教えてくれないのは知っている。
はああんリゾットちゃんって可愛いね可愛いな可愛いんだよ可愛いのは知ってたけど。知ってたけどこんなにもかわいいなんて。よしよしと背中を撫でまくって興奮を抑える。大丈夫かな、私こんなんでリュシアン君の所に戻って大丈夫かな。興奮の余波でリュシアン君を略取してしまわないだろうか。
「プロシュート、教えてくれてありがとう!」
「いい。こっちも見ものだったからなァー……」
ニヤニヤしているプロシュート。このネタで一年はゆすり続けそうだ。
「リゾットちゃんもありがとうね!可愛かっ、……じゃなくて。嬉しかったわ。また私の夢を見てね」
なんてフカしすぎたか?
精一杯にっこり微笑んで今までの興奮を無理やり押さえつける。激しく動揺した自分をなかったことに。そしてこの感情に名前を付けて保存。容量不足?外付けHDDがあるだろ。早急に憂いの篩を手に入れる必要がある。あと鍵アカならぬ鍵付きの記憶保存瓶。
「リゾットちゃんは可愛いなー……」
へらへら顔をだらしなく緩ませて、私たち以外の誰もいないことをいいことに手を伸ばしてリゾットちゃんのほっぺを指で撫でていると、リゾットちゃんはプロシュート兄貴を見て、私を見た。兄貴は肩をすくめて、まだくつくつと喉の奥で笑っている。
「時々思うんだが、お前は俺のことを猫か何かと勘違いしていないか?」
「え?してないよ?」
リゾットちゃんはネコじゃあないじゃん?
二人と別れてリュシアン君の待つ教室へ走って戻る時も心の好意的なざわめきは治まらなかった。あまりにも手がうずうずしていたので、「もう、捜しに行こうかと思っちゃいました」とぷんすかむくれるリュシアン君を大きな胸に思いっきり抱きしめてもごもご言わせてしまったが反省はしていない。あれもこれもそれもナニも全部リゾットちゃんが可愛いのがいけないんだ。殺伐としたホグワーツに一条の癒しが!
リゾットちゃんばんざい!