ハリー・ポッターの疑問
ホグズミードに行った帰りにとんでもない現場に立ち会ってしまった。
あれっパンジーとドラコ君も一緒なの珍しいねやっほーハーマイオニーちゃん、とぬくぬくファッションのハーマイオニーちゃんに手を振ったら、目の前にいたどこかで見たような憶えのある女の子がばたんと倒れあちらこちらに引きずられたような跡を残し、宙に浮かび上がった。悲痛な叫び声が冬のホグズミードをつんざく。
駆け寄って来たギアッチョが呆気にとられる私の肩を掴んで引き寄せる。たたらを踏んだところを支えてくれたのはイルーゾォで、ホルマジオとギアッチョはすでに前に出ていた。厳戒態勢を敷いた彼らの前で、女の子は―――ケイティ・ベルは積雪の上に墜ちた。ピクリとも動かない。ドラコ君は腰が抜けたのかどさりと雪の上に尻もちをついて、ドラコ君に躓いたロン君もべちゃりと転んだ。その気の抜けた光景を目にしてようやく私はこれが『呪いのネックレス』の事件だと気がついた。足元に散らばっている煌めくものが目に入ってビビッと嫌な悪寒に震える。うわあああこれだああこれが原因だあああ。素手で触れちゃいけないやつだ。
騒ぎを聞きつけて『三本の箒』から走って来たハグリッドが「怪しいものには触れるんじゃないぞ」と忠告しケイティ・ベルを抱き上げた。そのまま城へ戻っていく。
イルーゾォは雪越しにネックレスを足で除け、私から遠ざけた。
「ありがとう」
「別に……」
イルーゾォが女優ばりのクールっぷりを披露した。
メローネは腰に装備している『なんでも入るポーチ』から厚い皮手袋を取り出すとそれを嵌め、雪に埋もれる宝石に杖の先を触れさせる。こつこつと何度か叩いて、うん、と頷く。
「触んない方が良いぜ、特にイルーゾォ、あんたは。魔法自体への抵抗力は弱いだろ?」
「うるせえよ放っとけ。お前もあんま触んな」
「触ってないぜ。杖だけだし」
「揚げ足取んな」
「あなたたち、緊張感ってものはないの!?」
ハーマイオニーちゃんが肩を怒らせた。確かに場にそぐわない会話だったとは思う。緊張と恐怖からわずか解放された彼女たちの気に障るのはしゃーない。
「それ、なんだったの?僕……見たことがある……、『ボージンアンドバークス』で……呪われてるって書いてあった」
ハリー君が指差した先にはネックレスがあり、しゃがみ込むメローネがいる。メローネは先ほどとは一転、重々しい顔をして首を振った。さあね、俺は呪いが専門じゃないからわからない。ナニを言っとるんだこの子はと思わなくもなかったが、魔法界稀代の天才イコール何でもできると決めつけてしまうのは良くない。本当にどうしようもない呪いなのかもしれないしね。いやいや、しかしこの表情はナニか解りながらもあえて黙っているように見えるんだけどな。うん。気のせいだね、うん。
「誰かを殺そうとしたんでしょうね、やっぱり?」
「だろうよ。でなけりゃこんな手の込んだことをするわけがねえ」
問いかけて、答えを受け取ってから、はた、と奇妙なデジャブを感じる。アレ?この出来事って、ドラコ君が引き起こすんじゃなかったっけ。
ドラコ君は普通にビビッていた。私の目の前でハリー君とロン君とハーマイオニーちゃんに呆れられ、パンジーに助け起こされ、目の前で起こった怪事件にビビッていた。今のはいったい何が起こったんだあいつはグリフィンドールのクィディッチ選手だろう!?とハリー君の襟首をひっつかんで揺さぶって動揺を表す。ハリー君は、なんで僕に訊くんだよ解るわけないだろお前の方が何か知ってるんじゃないのか、と言い返した。
「事件の裏にはいつもお前がいるだろうポッター!?僕はあんなの知らないし、知っていたらお前とこんなところで会話なんかしているもんか!いったい……いったい何が起こってるんだ……」
事件の裏にはやっぱり矢張、ならぬやっぱりポッター。確かにねとグリフィンドール勢すら頷いたからハリー君の肩身が狭くなる。
ドラコ君は雪に埋もれるきらびやかなネックレスをおぞましそうに見下ろした。
「これも……あの人の……?」
"あの人"が誰を示すのか、誰も訊かなかった。全員の視線がネックレスに集中する。ただ一人の姿を思い浮かべているのだろう青少年少女の表情は引き締まり、いずれ相対し戦う存在のやり口の汚さに各々緊張を漂わせていた。
そんな中で、私は一人内心で首をかしげる。
これ、誰がやったんだろう?
疑問に答えが与えられないまま日は過ぎ、クィディッチの試合でロン君がとんでもねえスーパープレイを見せたり恋人が出来たと噂になったりハーマイオニーちゃんから恋愛相談を受けたり魔法薬学の授業でギアッチョがメローネの顔を魔法薬に突っ込みたそうな顔をしたり何度かメローネがスラグ・クラブにお呼ばれされたり闇の魔術に対する防衛術の授業でプロシュート先生がスネイプ先生と演習をして無言呪文を披露したりスネイプ先生がかなり本気でそれを防いでいたり女子たちが黄色い歓声を漏らして寮関係なく減点されていたりジニーちゃんとランチをしたりネビル君を連れて厨房に繰り出しおやつを食べまくったり魔法薬学の教務室にレポートの束を持って行ってスラグホーン先生にお茶をご馳走になったりハリー君から実は僕はダンブルドアの個人授業を受けていて……と謎の告白を受けたりしたそれなりに忙しく寒波も厳しい12月の魔法カレンダーはクリスマスまで残すところあと数日というところまで数字を進めていた。
私がメローネからの要請を受けたのは、スラグホーン先生に選ばれた生徒だけがスラグ・クラブのクリスマスパーティーに参加できるんだってさやっぱりミスターアトマは呼ばれるんだろうねと去年のDAで一緒になったレイブンクローの男子生徒とお話をして談話室に戻った時だった。
次の授業の準備を整えていたメローネは戻って来た私を見るなり、あぁ、と思い出したように言った。
「クリスマスパーティーに出席するように言われてるんだけど、パートナーが必要なんだ。ポルポ、一緒に来てくれるよな?」
なんで断定しているのかちょっと解りかねますけど、パートナーとして出席すること自体には何の問題もない。むしろ私で良いのか?もっと可愛い子を選択したほうが絵面がよくていいと思うんだけどね、私は。せっかくのパーティーなんだし。メローネが見栄えを優先してパートナーを選ぶような子ではないと知っているので何も言わずにおくが、やっぱり絵面。私が相手って映えねえー。すげえもったいないわよね。
クリスマスを目前に控えたホグワーツはそわそわと浮足立っている。生徒だけではなく、フリットウィック先生やスラグホーン先生のようなノリのいい先生もわくわくと待ち切れない様子でいるので、見ていてこちらまで楽しくなってくる。そういう私もクリスマス当日をすごく楽しみにしている。なぜかって、ホグワーツのクリスマスディナーはとてもおいしいんだよね。毎年少しずつ違った趣向が凝らされているから、隅から隅まで味見をするのが待ち遠しい。スラグ・パーティー自体はクリスマスディナーに振る舞われる料理を立食形式にするだけだという前情報を魔法薬学の教務室にレポートを届けに行った際に入手しておいたので、大広間とパーティーとの差異を食べ逃す心配はナッシング。
「パーティーに出席するならドレスを着た方が良いんじゃないの?」
パンジーは朝食の席でそう言って私をじろじろと眺めまわした。
「ドレスですか。ポルポ先輩はどんな色のドレスが似合うんでしょうね」
夢見るように言ったリュシアン君は私の隣でポテトを食べている。三つめのボイルドポテトだけど、私が言うのも何だが成長期に芋しか食べないのは健康に悪いんじゃないかな。
でもねパンジーちゃん、今からドレスローブを注文するのってかなり突貫で大変なことだと思うんだ。
「ルシウスおじ様に手紙を出せば明朝には届くわよ」
「うわマルフォイ家こわい」
「あら、知らなかったの?」
ふふん、と鼻先で私を笑ったパンジーはフォークでソーセージを突き刺した。考え込むように口を閉ざして、本当は、とため息のように呟く。本当は、パーキンソン家だって凄いのよ。
今のパンジーはマルフォイ家からホグワーツに通い、マルフォイ家に帰る生活をしている。闇に全身どっぷり浸かり込んでいるパーキンソンの本家からは絶縁を言い渡されたような状態で、16歳の少女には両親との離別は精神的にこたえるのだろう。気丈なふりをしていても、こうしてどこかでほころびが出る。
何を言おうか決めたわけじゃなかったが、なんとなく言いたいことが浮かんで口を開く。けれど声を出すよりも先に、私の隣のリュシアン君が立ち上がった。思わず椅子の上で身体を引く。
私という障害物がなくなったリュシアン君は興奮した声でパンジーに言った。
「家がなんですか!パーキンソン先輩、いえ、パンジー先輩!」
大きな声を上げてしまった少年は、自分の声の大きさに少し頬を赤らめた。パンジーを見つめることはやめないで、ポテトの皿が傾くのも構わずテーブルに手をついて小柄な身体を精一杯に乗り出す。
「家だってお母様だって、誰も僕たちのことを何もわかってくれていません。僕たちのことをわかっているのは僕たちだけで、一度起こってしまったことはもう変えられないんです。そこにどんな事情があったって結果がすべてで、否定したって泣いたって戻すことは出来ない。僕たちは進まなきゃいけなくなってしまった道を進まないといけないんです。だったらその中で、自分だけでも自分のことを信じてあげないとダメじゃないですか。……ダメだって、僕は思います。僕たちは間違っていないと、間違っていても進むんだと決めないと、パンジー先輩だけじゃなくて、周りの人もダメになってしまいます」
まくしたてられたパンジーが鼻白む。ソーセージが行き場をなくして彷徨い、皿の上に着地する。16歳の少女の素の表情がさらけ出され、小型犬のような瞳がなぜかリュシアン君ではなく私を映した。ドントルックアットミー。私ひと言も喋ってない、ごめん。
彼女は恥じ入るように顔をそむけた。純血貴族たるもの余裕を持って優雅たれ。そんな訓示でもあるのかもしれない。それなんて遠坂。
「あんたに言われるようじゃお終いね。自分にでも言い聞かせてなさい、レスティン。……いえ、リュシアンって呼んだ方が良いのかしら」
パンジーはすっかり冷めたソーセージをようやく食べた。
「あんたのドレスのこと、あたしの方からルシウスおじ様に言っておいてあげるわ。……どうせ去年のはもう胸が入らないでしょうから」
「ありがとう。罪深いおっぱいよね、本当」
「うるさい」
パンジーは憎々しげに私の胸を睨みつけた。さっきまでの沈鬱な眼差しとは違い、普通に巨乳を憎む目だった。あ、うん、なんかごめん。持つ者が持たざる者に何を言っても嫌みにしか聞こえないって言うよね……でもこの胸は……私のせいじゃないと思うんだ……。
精一杯着飾った私を前に、メローネは通常運転でイケメンだった。目元を隠す布の色が違って質感がシックになっているのがちょっとムカつく格好よさ。なんだこいつイケメンか。イケメンだったわ。
どっちかっていうと闇に属する青年のはずなのに白いシャツがめちゃんこ似合うメローネは、スラックスの布をぴらりとつまんで私に見せた。触ってみなよと言われたのでちょいと失礼して触ってみる。良い感じの生地ですね。
「魔法界の防刃布だぜ。これで切り付けてごらんよ、切れないから」
「いや、遠慮しとく」
勝負服ってそっちの勝負服かよ。
勝負服を身に纏ったメローネはいつも以上にテンションが高かった。
「なあポルポ、あのネックレスの呪いに見当がついたぜ」
「え……ホグズミードの?」
「そう。少なくともアレで人が三人殺せるね。プロシュートとも見解が一致したよ。ケイティ・ベルは服従の呪文をかけられてアレを校長に渡すよう仕向けられたみたいだけど、未熟な魔法使いの仕業みたいだね。同級生に異変を見咎められる程度だ。俺ならもっとうまくやるのにな」
未熟な魔法使いか。メローネの言葉の後半にある不穏な文節は無視。君なら確かにもっとうまくやるでしょうね。
ホグワーツにいる人間が犯人だっていうのは、原作の軸から外れたこの状況でも変わらない事実なのだろう。もしも―――まあこれはただの例えなんですけど、スネイプ先生が犯人だとしたらそんなへまはしないだろう。確実に、ダンブルドアの素肌にネックレスが触れるように仕向ける。そもそもネックレスである必要なんてなさそうだ。明らかに怪しいもんな、生徒がネックレスを持ってくるっていう状況。一足早いクリスマスプレゼントですってか。
だけど、ドラコ君は犯人じゃない。えええ?じゃあ誰やねん。ドラコ君の立ち位置に滑り込んだ闇の帝王の使い、未熟な魔法使いとは。
私が回答を導き出せずに出口のない迷路の中で右往左往している様子を見つめて、メローネは、気になるのかい、と首を傾げた。
「あんたが気にするようなことかな?ダンブルドアの安全がそんなに気にかかる?」
確かに、私らしくないことかもしれない。基本的に厄介ごととはグッバイハバナイスデイしたい性格だ。
「メローネだって同じでしょう?解らないことがあると気になる。ダンブルドアの安全は、今は私たちにとっても他人事じゃないしね」
どんなふうに原作とずれてきているのかも気になるし。だってドラコ君じゃないなら誰なんだよ。傍から見ていたらメローネたち一味が一番怪しいんだろうけどこっちは彼らがそんな面倒なことをするわけがないと知っているし。うーん、誰なんだろう。
面倒なことと言えば。
ソルベとジェラートは学校の外から、変わらず分霊箱を探しているらしい。定期的に私宛に手紙が来るのだけど、そこには笑いながらしたためたと思われる震える字が連なり、実に不調な探索活動の報告が書かれている。もうやめちゃいなよおと何度もそそのかしたけれどエデンにいるアダムとイヴのようにはいかない。蛇としての私の力量が足りていなさすぎるのか、アダムとイヴならぬソルベとジェラートのレベルが高すぎるのか、どちらもありそうだ。
まったく詳しく覚えていないんだけど、7つある分霊箱のうち大半がもうホグワーツにあるんじゃなかったっけか。なんか、あの、リドルの日記と指輪はもうダンブルドアがゲットしていて、スリザリンのロケットかなんかが洞窟にある、と思いきやそれは偽物で実はアンブリッジが持ってるとかなんだよね。あとはティアラ、とか、カップ……だったっけ。あれ?カップがホグワーツにあるのかな?なんかそんなやつがあって、えーっと、ナギニは分霊箱なんだっけ?計算が合わないから分霊箱ってことにしておこう。どれがどこにあるかなんてガチで記憶にないんだけど。半分はホグワーツにあるで。
原作知識というアドバンテージがあったはずの私ですらこの状態なんだから、ソルベとジェラートたちが独力で見つけられるなんてそんな幻想。彼らに大変な無駄足を踏ませているようでつらい。
スラグホーンとの写真撮影を笑顔できっぱり断っているメローネは爽やか極まりなかった。引きつっているスラグホーン先生の笑顔が苦しい。
見つけたところで、ソルベとジェラートに破壊するすべはない。それを誰よりも彼らは解っているはずだ。それでも探しているということは、うーん、なんだかソルベとジェラートに限っての話だけども、モラトリアム期間の暇つぶしついでに探している、ような、気がしなくも、なくもなくもなくなくない。うーん。闇の帝王の存在が目障りなのは真実だろうけど、危険を冒してまで手を出すつもりはなく、もしも運よく見つけられたらそれはすべて偉い人に丸投げ。え?だって俺ら壊せねえもん。ケロッとそんなことを言ってのけそうだ。シビれないし憧れない。
「やあポルポ、君はメローネのパートナー?」
「ハリー君。そうなんだよ、ご飯目当てでお邪魔してます。ルーナちゃんもこんばんは」
「うん、こんばんは。そのドレス、まるでニフラーみたいで可愛いね」
ニフラーって黒色でぴかぴかしたものが好きな生き物だったっけ。確かに今日の私のドレスローブは柔く光沢のある黒色です。ルーナちゃんのドレスローブも可愛いよと正直に褒めると、夢見るような笑顔が咲いた。
「ハーマイオニーはコーマック・マクラーゲンに付きまとわれて大変みたいだけど、……メローネも凄い人気だね。みんな自分のパートナーをそっちのけだ」
スラグホーン先生のみならず、ハリー君の言う通りパートナーを放ってメローネにメロメロニャンコになっている女の子たちは多い。モテる男子からは早々に離れた。メローネには申し訳ないけど吉良吉影は静かに暮らしたいし私は静かにご飯がたべたい。
「ねえ、前に僕がダンブルドアから個人授業を受けているっていう話はしたよね」
「ハリー、飲み物はいる?」
声をひそめて私に顔を寄せたハリー君は、後ろからネビル君に話しかけられてすぐに振り返った。
「ネビル!君も参加してたの?お勧めは?」
「給仕係でね。このトレイの中ではプッシー・フットとサンドリヨンだよ。ポルポ、君はどう?」
「一番カロリーが高いやつをください」
「そう言うと思った。でもどれが高カロリーかはわからないや……ごめん」
いいんだよいいんだよ。私はネビル君がお勧めだと言ったサンドリヨンを貰うことにした。おいしいよね、ブレンドされたジュース。
ネビル君は、今度はカロリーについても勉強するね、と穏やかに微笑んで次の参加者の元へ向かった。なんていい子なんだ。涙が出て来る。魔法界の癒しはネビル君とルーナちゃんのコンビじゃなイカ。異論は認めない。
背の高い青年を見送ると、ハリー君は気をそがれたように肩をすくめた。ノンアルコールカクテルを飲んで、あっこれおいしいや、と目を丸くして、先ほどの話題とは全く関係のないことを話し出す。
「さっきマクラーゲンがスネイプの足にドラゴンのタルタルを吐き掛けたんだ」
マジでか。超見たかったわ。
「あの時のスネイプの顔、滅茶苦茶面白かったよ。マクラーゲンはひと月の罰則を食らうし、フェリックス・フェリシスを飲んでもいないのに面白いことが起こる。持っているだけでツキが回るのかな?」
「気の持ちようかしらねえ。ドラゴンのタルタルってそんなにおいしくなかったっけ?臭いはきついけど味は良かった気がするんだけど」
「ちょっと言い間違えちゃったんだ。"それ何?"って訊かれて、"ドラゴンのタルタル"って答えようとしたんだけど」
ハリー君はひょいと肩をすくめた。私の耳元で素早く囁く。蹴り上げられると死ぬほど痛い部分と言い間違えたらしいよ。ドジっ子だね。
ルーナちゃんとハリー君、それから戻って来たメローネの四人でぺらぺらとスラグホーン先生とは一ミリも関係のない話を繰り広げていると、ハリー君がふいに声のボリュームを抑えて深刻な顔をした。数十分前に言いかけてやめた話を再開するつもりのようだ。
「スネイプが言ってた。ダンブルドアはヴォルデモートを殺す手がかりを見つける為に旅に出ているって」
「ふうん……、つまり探しに出ているわけだね。俺の予想が正しければの話だったけど、この様子じゃダンブルドアも俺と同じ前提で動いているらしい。ギアッチョに自慢してやろう」
ホークラックスの話だ。メローネはダンブルドアの行動をそう読み取ったようだった。正解だ、と心の中だけで丸を付けておく。すごいなあこの子、なんでも解っちゃうんだね。え?なんでもじゃなくて解ることだけ解ってる?心の中で委員長が言ったがスルー。毎度おなじみの雑念である。
「メローネ、君は何か知っているの?ダンブルドアが……何を探しに出ているのか?予想って何?前提って?」
勢い込んでメローネに詰め寄ったのはハリー君だ。彼にしてみれば、すべてを知ったようなことを言うメローネに問いかけずにはいられないのだろう。中心にいるように見えて実は誰よりハブられていることの多い青年だからな。失礼なことを言ってゴメンねハリー君。
「俺は教えてやってもいいけど、それってダンブルドアを裏切る行為なんじゃないのかい?」
「……先生が言わないことを知ろうとしているから?それって裏切りかな?僕はダンブルドア先生の助けになりたいだけだ。……ポルポはどう思う?」
なんで私に振ったの。完全に蚊帳の外でルーナちゃんとお話をしていたからサンドリヨン噴くかと思った。
「えっと……ダンブルドア先生は自分でも確証を持てずにいる知識をハリー君に伝えて、ハリー君を混乱させるのが嫌なんじゃない?物事がうまく運ばないかもしれないから今のところハリー君に黙っているだけじゃないかな?時が来れば教えてくれるよ、たぶん」
ホークラックスのことで悩んでるんでしょあのお爺ちゃん。ガチでそのうち教えてくれるよ。ていうかハリー君がスラグホーン先生から真実を突き止める役割を負うんだし。
「……じゃあ、メローネから聞くのはやめておくよ」
なんで私の言葉で追及を止めちゃうの。いや、いいんだけど。良かったんだけど。無駄な混乱が避けられて私としては都合がよかったんだけど、なんで私の言葉をきっかけにしちゃうの。責任がのしかかって来るからそういうことは出来るだけしないでほしい。後々でポルポのせいだーとか言われても私は逃げるしかない。そういうことを考えちゃうところが私の汚いところなんだな、ハイ。知ってます。私のおっぱいの大きさですべてを許してもらいたい。