ダンスパーティーで
ダンブルドアとの話を終えてパーティー会場に戻ると、ハリー君が手を振ってくれた。私も振り返してそちらに向かう。
ハリー君はちょうど、セドリック・ディゴリーと話をしていたところだった。
「やあ、こんにちは。君がポルポ……えっと……」
「ただのポルポでいいですよ」
家名、クソ長いからね。
セドリック・ディゴリーは苦笑して、ごめんねと言った。いいんだよ、私も自分のファミリーネームを名乗るのにすごく抵抗がある。噛む。かみまみた。わざとじゃない。
「私はチョウ・チャン。あの……あの時は言えなかったけれど、ありがとう」
「……エ?」
黒髪の美少女が私に小さく頭を下げた。意味が解らなくて、何が?と訊ねると、チョウちゃんはそれこそ意味が解らないというふうに目を見開いた。憶えていないの、と言われたが、憶えてないんだよ、ごめん。
どうして感謝されたのか理由を聞いてみると、どうやら数年前の私はチョウちゃんが廊下でスリザリン生にぶつかられてぶちまけた教科書や羊皮紙やペンを拾い集めたらしいよ。そんなの憶えてないよ何年前のことだ。
記憶を辿ってもまったく思い出せなかったのだが、正直に言うと傷つけてしまうかもしれない。危惧した私は魔法の呪文を使うことにした。
「気にしないで、私にとってはなんてことないことだったんだよ」
同年代に話しかけるようにしてしまってから、もしかしてチョウちゃんって先輩だったかも、と原作のことを思い出したがもう撤回は出来ない。チョウちゃんのことなんて、セドリックの恋人だったこととハリー君と情熱的なキスを交わしたこととアンブリッジに嵌められて裏切り者扱いされたことしか憶えてないし、それだけ記憶していれば充分だと思う。私の記憶容量は周囲と比較すると少ないぞ。ホルマジオは規格外だけどそれにしたって、重要じゃないことは気にも留めない性格なので、忘れていることや気にしていないことが多すぎる。
チョウちゃんはぱっと微笑んだ。
「ハリーが言った通りね。ポルポってすごく良い人だわ」
そいつは誤解だ。私はガチで何も憶えていなかったんだよ。
「こいつは良いヤツっていうより鳥頭なだけだろ。食べ物のことしか詰まってないんだぜきっと」
そしてロン君、それはちょっと失礼だ。
どうやらハリー君とセドリック・ディゴリー、それからチョウちゃんは"スリザリンの変人たち"の話題で盛り上がっていたらしい。そこは恋愛の話とか課題の話とか、学生らしい話をしておこうぜ。なんで私たちの話なんだ。そしてもうすっかり定着してしまった変人呼ばわりがつらい。
それにしてもさ、セドリック君はハリー君に何も思ってないのかな?
ホグワーツの代表に落選してしまって、イレギュラーが二人も選出されたのに、とても和やかに話をしているように見える。セドリック・ディゴリーがいかに大人な性格だとはいえ、あのハリー君の方もこんなギスギスしてないで話が出来ているって凄いことじゃないかな。ハッフルパフのコミュ力がヤバいのか?それともチョウちゃんというかすがいがあるからか?
要点だけ取り上げて質問する。ハリー君とセドリック君は顔を見合わせて、チョウちゃんが代わりに説明してくれた。
「セドリックはハリーを応援することにしたの。ハリーとミスターアトマのどちらが勝ってもホグワーツに栄誉が与えられるけど、スリザリンの人たちは自寮以外からの応援を快く思わないでしょう?セドリックはハッフルパフだから余計にそうだわ」
そうだね、ギアッチョは気にしないと思うけど、周囲がね。スリザリンとハッフルパフって仲悪いし。
「ハリーと話してみてすぐにわかったよ。ハリーは悪いやつじゃないし、とてもフェアだ。クィディッチの試合でもそう思ったけど、たぶん僕らが同じ学年で同時にゴブレットに名前を入れたとして、僕だけが選出されたとしても、ハリーなら僕のことを応援してくれるはずだって。だから僕も同じようにしたいと思ったんだ」
「セドリックは凄く良い人なんだ。……僕が名前を入れていないって、……まあ信じてはくれてないみたいだけど……その……」
「入れたか入れてないかは問題じゃないんだ。選ばれた代表としてベストを尽くせるか尽くせないか、それだけだよ」
爽やかでとても良い青春を送っているみたいだ。
意外なところでハリー君とセドリック君、そしてチョウちゃんの結びつきが出来ていたようでおねえさんはびっくりだよ。だけど悪い関係じゃなさそうだし、見ていてからりとした晴天の日みたいな気分になる友情だ。主人公君の周りには好感の持てる人がたくさん集まるんだなあ。類は友を呼ぶってやつかしら。
ところでハリー君はチョウちゃんに恋心を抱いていたと思ったんだけど(なにせ必要の部屋でキスをするくらいだし)パートナーには誘ったのかな。誘って断られたうえでこうして会話をしているとなると、全員ハグリッド並にアバウトなメンタルを持っているということになるが。
野次馬根性が顔を出したので、悟られないようにこっそり耳打ちしてみた。
「ハリー君ってチョウちゃんのこと好きなんじゃないの?」
「えっ、な、なんで……」
激しく動揺していたのでこいつはビンゴだなと思って、見てればわかるよと嘯く。するとハリー君はセドリックとチョウちゃんに苦笑を向けてから、私に囁き返した。
「好きだったけど、こんなに見せつけられたら諦めるよ……」
確かにね、と私も二人を見る。
首を傾げた青少年たちは、ハリー君と話している間も私が加わった後も、ずっと手をつないだままだ。ハリー君には可哀想なことだが、こいつは入り込む隙間がない。
それからしばらく私も彼らと楽しく会話をしていたが、久しぶりに健全なカップルを見たので目が幸せだった。ぼっちのハリー君とぼっちの私でこっそりぼっち同盟を結ぼうと持ちかけたりもしたが、それについては満場一致で拒否された。君にはネエロ先生がいるじゃないかと言われたけれど、現状私はぼっちじゃん。おねえさんのことも仲間に入れてよおー。