イエス騒動、ノー迷惑


校内はピリピリと緊張が高まっていて居心地が悪い。授業も終わったことだしペッシのいる医務室で次の予定でも相談しようと思っていると、ちょうどそのペッシが大広間から出て来るところだった。
「あ、ちょうどよかった!ポルポ……じゃなかった、えっと」
ペッシは私の家名を呼んで、こほん、と周囲の様子を憚って咳払いをする。
「これから時間はあるかい?前に約束していたこと、今なら出来そうなんだ」
「えっ、本当に?あるある、時間あるます!」
思わず素と敬語が混じってしまったが、ペッシは気にすることもなく(気づいていない可能性もある)朗らかに頷いた。
二人して廊下を歩き、ぽかぽかとした日の光に私はカーディガンのボタンを開けた。日向を歩いていると暑い位だ。この寒暖差が秋のつらいところで、同時に魅力でもある。服装なんかには困ってしまうけど、今の私は学生だ。ブラウスとプリーツスカートを履いていれば間違いはない。ローブを羽織ればなんでも様になるもんだよ。
ハグリッドの住む小屋よりも森に近い方へ誘導される。木陰に入ると一転して肌寒いが、まだ耐えられないほどではない。温まりすぎた身体には、ちょうどいいくらいだ。ペッシは持っていた手提げの鞄からタッパーに詰められたエサと思われるものを取り出した。シリー、と愛称のように呼びかけると、遠目に見えていた黒い影が動いた。石かと思ってたわ。
「シリウスって大声で呼ぶとよくないから、今だけはシリーって呼んでるんだ」
Siri乙。ハリーとちょっとかぶってるよね。
やって来たのは、ぼさぼさとした毛並みの黒い犬だった。体は大きく、ご飯を待ち望んだ口からよだれが一滴落ちる。しかし私の姿に警戒を抱いたように、一定の距離を保ったままぴたりと停止した。ペッシは屈みこんでシリーと目線を合わせる。
「彼女はいつも話しているポルポだよ。ポルポ。怖くないからおいで。……ポルポ、よかったらエサで釣って」
タッパーを差し出されたので、柔らかく茹でられたささみを一切れ摘み上げて同じようにしゃがみ込む。地面に膝をついて、ほれ、と軽く振ってみせると、犬の耳と鼻がぴくぴくと動いた。わんこ可愛い。けど私は君の正体が知りたいんだ。
犬に話しかけるように、だけどもしも中身が人間ならすぐに理解が出来るように名前を名乗る。私はポルポって言うんだよ、ペッシのお友達で、ホグワーツの生徒なのよ。犬は大好き。おいでおいで。
シリーはすぐに逃げられるように尾を巻きながら、のそりと私に近づいて、慎重にささみの匂いを嗅いだ。しかしちょっと焦らすように手を引いてみると、待ても出来ずにかぶりついてくる。食べられた。おいおい、お座りお手おかわり伏せ待て、は定番だろ。やってみたかったのに。
「こら、シリウス。いつもみたいにちゃんとしないとダメだろ?教えたのにな、よっぽどお腹が空いてたみたいだ。ごめんねポルポ、もう一切れあげていいよ」
「うん」
もしこれがシリウス・ブラックだとしたらこの絵面クソウケるんだけど。跪いた少女の手から、四足歩行で首を伸ばし直接ささみにかじりつくアラフォーの脱獄囚かっこ元イケメンかっことじ。
私は三回くらいささみをあげて、ペッシはこちらも柔らかく煮込んだ主食をペットフードのお皿に入れて差し出した。カリカリしたエサもまぜてあるので私の腹筋がピンチ。食べちゃうんだ。食べないと飢え死にしちゃうから食べるのは解るんだけど、それ犬の味覚だとおいしく感じるのかな。どうなんだろう。アニメ―ガスって感覚器官の変化はあるらしいから味覚も変わるのかもしれないけど、どんな味に思えるんだろう。でも、おいしいかどうか訊ねても答えはないからどうしようもないもんなあ。
「そういえば、この間は大広間で寝心地が悪くなかったかい?ホグズミードの帰りで疲れてたのに、大変だったね」
切り出そうとしていた話題をペッシちゃんの方から振ってくれた。凄いやペッシちゃん。まさにそれです。
「うん、寝袋も悪くなかったよ。それにしても太ったレディは災難だったよねえ、シリウス・ブラックに切り裂かれちゃったんでしょ?」
「そうなんだよねえ、しばらくは別の肖像画が担当するみたいだけど、グリフィンドールの生徒には評判が悪くて……、あ、シリー、お前のことじゃないよ」
エサを食べる動きを止めてこちらを伺っていたシリーは、気まずそうな雰囲気を醸し出して再びお皿に顔を突っ込んだ。うん、もう確定させちゃっていいよね。
「ハリー君たちも災難だよね、一昨年から今年まで色々あってさ、平穏な学生生活が望めないって言うか」
わんっ、と犬が吠えた。何を言っているかはバウリンガルがないのでわからないけど、ハリー君の名前に反応したのだとしたらこいつはビンゴでシリウス・ブラックだし、隠し事が得意じゃないところがものすごくグリフィンドール的だなあと思った。正直は美徳かもしれないけどたまに損だってばっちゃが言ってた。
「ポルポはね、ミスターポッターのお友達なんだよ」
犬が、「え、お前スリザリンなのに?」みたいな表情をした。雄弁すぎるだろ。相手がペッシちゃんじゃなかったら何かしら見抜かれていると思うぞ。ふはははこのポルポおねえさんがいることを惜しむがいい、お前のたくらみはすべてまるっとキラッとお見通しだ。
すごく仲がいいんだよと言われて、いやそんなことはないんだけど、と思うも否定するとまた事態がこじれそうだったのではぐらかした。すごく仲がいいなんて照れちゃうなあと嘯くと、犬はぱたぱたと尻尾を振った。ハリーの友達だっていうだけでスリザリンという寮の垣根を越えたらしい。ペッシがこれまでの期間で犬を懐柔していたことも効いているのかな。このペッシがそう言うならそうなんだろう、みたいな?
「シリー、お前は夏休みの間、ポルポのおうちに寄せてもらうことになったからね。しっかり匂いを覚えて、ポルポと遊んであげてね」
「ペッシちゃんそれ逆じゃね?私が遊んであげるんじゃね?」
「あっ、ごめん」
いいけどね、全然気にしてないけど、極ナチュラルに言われたからつい突っ込んでしまった。
黒犬シリウスはグレーの瞳で私を見つめて、わふ、と一度何かを言った。もちろん意味はわからなかったけど、まあ、オメーんとこに引き取られるなんてゴメンだこのスリザリン野郎、的なニュアンスではなさそうだったので安心した。シリウス・ブラックって敵に回すと面倒くさいタイプだもんね。


代理教師としてDADAの教壇に立ったスネイプ先生は絶好調だったらしい。初っ端からかっ飛ばしてハーマイオニーちゃんから点数を剥ぎ取り丸裸にすると、次はハリー君に矛先を向けて陰湿な嫌みを粘着質に投げかける。嫌みのトリモチに絡みつかれたハリー君は憤慨した様子でスネイプ先生を罵った。私の目の前で。なんで私の目の前で話すの?
「ポルポなら聞いてくれる気がして……ごめん」
いや、いいけどね。半分くらい聞き流してるけどそれこそいいのかな。ルーピン先生がお休みだったことと狼人間について取り扱ったことと、それが原作の通りだってことしか頭に入ってない。ハリー君は誰かに話したかっただけだと笑ったけど、すぐにうんざりした表情に戻ってしまった。
「魔法薬学でもスネイプと顔を合わせるんだぜ。最悪だよ」
言いながら、ロン・ウィーズリーはパンにピーナッツバターをたっぷり載せる。それおいしいよね、ピーナッツバターは高カロリーでおいしいから私も好き。ピーナッツおいしい。
「スネイプ先生はともかくとして、そういえばみんなは何でネエロ先生のことを嫌がってるの?」
「だってあいつ、ナニ考えてるかわかんないぜ」
「でもそういえば、悪い評判は聞かないね。加点は少ないけど減点も少ないし、減点する前にもちゃんと理由を聞くって噂だし……」
「まあ、評価できるところはさ」
ロン君はパンを両手で支えていたので、行儀悪く肘でスリザリン席を示した。ああそうそう、私はハリー君とロン君に引っ張られてグリフィンドール席にいるんだよ。このアウェイ感で死ねる。味方になってくれるはずのメローネはソルベとジェラートに校内の抜け道を教わっているし、イルーゾォはそもそもこんな面倒の中に入ってくるはずがない。ホルマジオはまた医務室だ。ギアッチョが私を助けてくれるわけもなく、私は赤色のネクタイの中で浮いた存在となりながら孤軍奮闘している。
「あいつらはスリザリンだけど、ナニかやらかしたらそっからもきっちり減点するところだよな」
なんだかんだ言って、リゾットは人望があるらしい。暗殺チームのリーダーを務めあげたお母さんポジションは伊達じゃない。
でもその点についてはスネイプ先生も同じだけどね。まるでグリフィンドールを相手取っているかのように、ソルベとジェラートに対する減点は容赦がない。このバカ者どもめがと怒声を上げてホモたちの爆笑を掻き消すことがしばしばあると、影の薄いスリザリンの先輩が教えてくれた。エルリック先輩という名前だ。錬金術師乙。一年生の時はなんだかんだで寝る前にお話をしたりしていたのだが、最近はO.W.L試験に向けての対策が忙しいらしくて顔を合わせることが少ない。閑話休題。
「ポルポは加点も減点もされないわよね」
ハーマイオニーちゃんは食パンに苺ジャムを塗りたくっている。甘いものを多く摂ろうとするのは、毎日頭をフル回転させているからかな。やっぱし疲れるのかも。
「そういえばそうだね。魔法薬学ですら、ポルポが加点されているところってあんまり見かけないし……」
「ネビルがいるからじゃないか?」
ロン君が失礼なことを言った。ネビル君近くにいますよ。しかし精神的に大人なのか本心から恐縮しているのか、ネビル君は何も言わずに苦笑してチキンとハーブのサンドイッチに戻る。
私が加点も減点もされない理由は、ギアッチョとちょっとだけ似ている。ギアッチョは面倒だから。私も面倒だから。似て非なる部分は、ギアッチョは回答をする手間すらを惜しみ、そもそも教師の質問に答える気がない。私は答える気はあるけどガチで理解できていない時があるから加点されにくいし(彼らはだいたい、一回で理解できる。チートマンどもめ)、大きく減点を受けて目立つことはもちろん避けたい。瞳と家名と婚約者と食事量ですでに目立っているのにこれ以上どうしろと。
一般的な生徒として生活しているので、アクションバイオレンスデンジャーアドベンチャーで埋め尽くされた主人公組からすると不思議なくらい加減点がなく見えるのだろう。周り見てみ、大体みんなそうだから。
「スリザリンだから心配ないとは思うけど……ポルポたちは"普通"のスリザリンじゃないから、こう言っておくね。DADAに気をつけて」
ハリー君たちは、意外なほど真剣な顔で私を見送ってくれた。トートバッグを肩にかけ直してパンジーたちと合流し、グリフィンドール席でのうのうと食事を摂っていたことを叱られつつ、思う。
なんか私、良い方向に勘違いされ過ぎじゃないかな。
確かにメローネは去年度にハリー君たちと一緒に対バジリスクの死闘を繰り広げ、彼らと友情を築き上げたかもしれない。一昨年はなんかメローネがハリー君たちを図書室で助けたらしいし?私はよく知らないけど?稀代の天才と呼ばれるスリザリン生と主人公組は絡みまくっている。これはメローネが彼らに信頼されてもおかしくない。
ソルベとジェラートも、"スネイプから容赦なく減点を受ける"という立場と、ゲラな性格から親しみを抱かれるのだろう。彼らは味方も作らないが敵も作らない。
イルーゾォは実にスリザリン"らしい"生徒ではあるが、隣にいるホルマジオがイルーゾォのツッコミというポテンシャルを発揮させてくれるので、彼自身の成績が非常に悪いこともあり、敵視はされていない。成績が悪いからどの先生からも優遇されていないという意味でね。スネイプ先生ですら匙を投げる手抜きっぷりだから。
プロシュートとペッシは素でカッコいいから置いておく。彼らが羨望と、好評を集めるのは決まりきったことである。見ていてとても誇らしいし、私もがんばらないとなあと思う。
そう、私はがんばらないとなあ、と思うだけの立場だ。
元々私が彼らの上司だったことや大人の女だったこと、はたまた前世の記憶があったりなかったりらじばんだりすることは生徒たちは知らないわけだし、××という名前だった前世云々については暗殺チームですら知らない。特別感なんてちょっとしかない(家柄的な意味で)スリザリン生だ。むしろ残念とは言われどもイケメンと呼ばれる子たちと仲良くしているし、イケメン助教授の婚約者という立場だし、マルフォイ家という明らかに真っ黒なお家の後ろ盾も受けている。これ、どう考えても闇側だよな。
なんだろうねえ、年頃にしては大きいおっぱいの力か?隠しきれない私のおっぱいオーラが生徒たちの荒んだ心を癒しているのか?
いくつか可能性を考えようとしてみるも、雑念ばっかりで真面目に頭が働かなかったのでやがて私は考えることを止めた。悪い方向に勘違いされてないならどうでもいい。期待に応えられない可能性がある、というプレッシャーを感じなくもないけど、勝手に期待してきたのはそっちだ。私は知らん。気づかなかったふりをしよう。善処しましたけど無理でしたで押し通そう。ジャパニーズの魔法カード、善処。

クィディッチがあったりハリー君が箒から落下したり元気になったけど半身でももぎとられたように消沈していたり、主人公たちの毎日は忙しい。ニンバス2000?あいつはいい奴だったよ……。私も見せてもらったことがあるけど、見た目がとても格好良かった。新しいモデルが出ると古いものは劣化して見えがちだけど、箒はそれぞれ個性があって飽きないね。今は木屑に変わってしまったらしいので、箒の話題は避けよう。
「おやポッター、ディメンターに気をつけないとまた落下するかもしれないぞ。おっと……もう空を飛ぶ箒は持っていないんだったっけ?」
ドラコ君も絡むのやめよ。それも私がいる時に絡むのやめよ。ハリー君もロン君も憎たらしそうにドラコ君を睨んでいるじゃん。
どうしてドラコ君はよく思われていないって解ってるのにハリー君たちに構うのかな?もしかして好きな子の気を惹きたい思春期のアレかな?
「ばっ、……バカじゃないのか君は!僕はそんな、ポ、……ポッターのことにゃんて」
口に出てたか。ごめん。
即座に反応したドラコ君の頬は真っ赤で、付き人のように従っているクラッブとゴイルが困ったように顔を見合わせた。上品な英語が崩れて、まさに"図星を突かれて羞恥している"ような少年の図が出来上がる。これは……。
「マルフォイ……」
そしてこのハリー君の視線である。
「ちが、違うからなポッター!僕はお前なんか好きじゃない!むしろ嫌いだからな!」
「そういえばこいつ……マルフォイって、初めて会った時からハリーと友人になりたがってたよな……。それで断られてざまあみろって思ってたけど……」
ロン君の鋭いパス。受け取った私はそれをトス。
「断られて悔しかったし、まだ諦めきれないからハリー君に突っかかっているっていう可能性が?」
「なくはないわね」
ハーマイオニーちゃんが鋭いアタックを決めたらドラコ君が動かなくなった。あまりの出来事に思考回路がショートしたっぽいな。庇うようにボブカットの少女が前に出て、ふわふわ頭のハーマイオニーちゃんに人差し指を突きつけてにじり寄る。
「あるわけないでしょドラコがポッターのことを好きだなんて!ドラコは、ドラコはあたしのなんだから!」
「あら、気持ちの在処は本人にしかわからないわよ。ミスパーキンソンがマルフォイのことを好きでも、マルフォイはハリーのことが好きかもしれないじゃない?私は偏見は持たないわ。……まあ、前途多難だとは思うけれどね」
しれっと言い返したハーマイオニーちゃんは、つんと顔を逸らして見せる。パンジーはそのおしゃまな仕草に苛立ちを募らせ、わなわなと唇を震わせた。小型犬が牙をむき出しにして唸っているようだ。
「ありえないありえない!……ッ、ポルポ!さっさと撤回しなさい!」
え?私?
「お前以外の誰がいるんだよ」
なぜか冷静なロン君にツッコミを入れられてしまった。ハリー君はドン引きした表情でドラコ君から目を逸らし、ドラコ君はそんなポッターの誤解を解こうと必死こいて墓穴を掘っている。ちょっとした妄想がここまで激しく実を弾けさせるとは思っていなかった。うーん、若者たちよすまない。おねえさんが悪かった。
でも、なんか仲良くなれそうだね君たち。
「こいつと!?在り得ない!!」
私とハーマイオニーちゃん以外の声が重なって一つに聞こえた。ほら、そういうところがさ。

スペインの雨は主に平野に降るが、霧の都ロンドンを首都に据えるイギリスの雨はだいたいどこにでも降る。霧雨のような可愛い物から、ざあざあと重苦しい音を立てるどしゃ降りまで様々だ。この12月は特に雨が多く、もし洗濯物を干す必要があったなら、私はとても困ったことだろう。
幸いなことにここはホグワーツで、洗濯物はクリーニングルームに出せば数日後には自動的にたたまれて部屋に戻されている。ものすごく堕落しそうなシステムだ。マグル出身者とその他一部しか疑問視していないところに魔法界の闇を見た。
「雨は見飽きたわね」
イギリス生まれイギリス育ちのパンジーも嫌気が差したようで、偶然にも同じ屋根の下で雨宿りをすることになったハーマイオニーちゃんを横目にじろりと睨みつけ、忌々しそうに距離を保ちながらぼそりと私に囁いた。ハーマイオニーちゃんはそんなパンジーを見て何を思ったのか、私もよ、と前を見たまま教科書を濡れないように抱きしめて言った。パンジーはすぐさま、あんたには言ってないわよ穢れた血になんか話しかけるもんですかと刺々しい言葉を飛ばしたが、ハーマイオニーちゃんはそれを無視して、天文学の先生が推測した天気予報をそらんじた。クリスマスの頃には晴れるらしい。
すぐ近くにいるのにとても心の遠い二人に悪戯をしたくなったので、私は一つ戯言を言うことにした。
「よかったー。クリスマスに晴れるなら、サンタさんが困らなくて済むね」
「……」
「……」
二人が同時に猛烈な勢いで私を振り返った。あまりのことにビクッと跳ねると、ハーマイオニーちゃんは口ごもり、パンジーは躊躇せず高い声を上げる。
「あんた、まだ信じてたの!?」
「ちょっ、……パーキンソン、それは……」
うん、それは言っちゃダメだと思うよ。本当に信じてたらどうするんだ。
しかし私の狙い通り、この二人は私という共通の弱者を見つけたことで何かしらの距離は縮まったらしい。今までは目も合わせなかったのに、最近は合同授業の教室で鉢合わせるとパンジーだけでなくハーマイオニーちゃんもお互いのことを言葉でけん制し合うようになった。好きの反対は無関心だというし、何かしら繋がりが持てたのならよかったんじゃないですかね。喧嘩から芽生える恋もあるさ。私は百合も応援しています。
まあナニがしたかったって、正直ハーマイオニーちゃんとすれ違うたびにパンジーが本人に伝えない嫌みを私に聞こえるように呟くものだからちょっぴり疲れていたって言うのがあるんだがね。ハーマイオニーちゃんはハーマイオニーちゃんで面と向かって言われないことで言い返せないストレスが溜まっているようだったし(彼女は私の友人について悪口を言うことはないから、これは推測でしかないけど)、どうせなら面と向かって喧嘩してくれた方がこっちに被害がなくて良い。自分勝手な大人でごめんよ少女たち。