イエスお貴族、ノー現実


私の保護者って誰なんだろう。
時は夏休み、場所は私の家。無駄に広い家に感心したんだか呆れたんだか微妙な表情を浮かべて嘆息したパンジーは、臆さずひとの家のソファに腰を下ろした。ここまで気安く接してもらえる仲になれたのかあと嬉しくなってしまう。水出しの紅茶を出すと、ボブカットの黒髪頭を縦に動かして、ふうん、と満足そうな笑顔が花開く。
「この茶葉、ポルポにしてはいい趣味だわ」
「あ、それはプロシュートがくれたんだよ」
「あらそう。あんたらしくないと思ったらそういうことだったのね」
褒められてはいなさそうだ。でも、良家のお嬢様を納得させる茶葉を選ぶプロシュートのセンスは、さすが独特のスーツを着こなすだけあるね。
ごく自然にお茶の葉の棚に収められていた箱は、プロシュートのものだから、と手を付けずにいると、なんで飲まねえんだ、と逆に問いかけられてしまった過去がある。最初から私のために買ってくれたらしい。もしかすると我が家の紅茶に物申したいところがあったのかもね。彼の舌は肥えている。
ねえ、とパンジーに話しかけると、パンジーは目だけを動かして私を見た。さっきからグラスに口をつけたままちびちびとアイスティーを飲んでいる。そんなに気に入ったならメーカーを教えようか。
「あとで紙に書いて。……それで、何?」
「あ、うん。あのさ、私の保護者って誰だと思う?」
「……」
眉をひそめたパンジーは桜色の唇をつんと尖らせた。考え込む時の癖なのだと知ったのは去年だったっけ、一昨年だったっけ。
「ネエロ先生……になるんじゃないの?元々後見人は誰だったのよ?」
「ルシウスさんによると、マルフォイ家の方で子供にさばききれない利権の問題なんかを担当してくれてたらしいよ」
利権については私も結構得意な話なんですけどね、ギャングの幹部的な意味で。
ルシウス・マルフォイが私の面倒を見ていたのは善意じゃあないだろう。予想でしかないし、実は子供が大好きで私の世話をすることに父性を感じているなんていうオチがない可能性も捨てずにおきたいけど、まあ無視していいよね。おおかた我が家の血とのつながりを強くして、いざという時に子供を、私を丸め込めるように『大人』的な対応をしていただけの話ではないだろうか。ただの子供じゃなくてごめん。身体は子供頭脳は大人。大人と自分で言い切ってしまうのはなかなか恥ずかしいけど、年数で言えば大人。
「なんで急に?……ああ、言わなくていいわ。ホグズミードね」
「そうなんだよ。行ってみたいじゃん、お菓子がいっぱい売ってるっていうし」
バタービールとかロマンすぎるよね。ハニーデュークスなんていう覚えにくい名前もばっちりだよ、なにせつい先月に原作を読み返したばかりだ。
「まさかルシウスおじさまに頼むわけにもいかないわよね。……もうスネイプ先生に頼めばいいんじゃない?許可をするのは寮監なんだもの。スネイプ先生のサインは何より効果的でしょ。ネエロ先生がダメだったらそうしなさいよ」
素直にサインしてくれるかなあ。ホグズミードって、課外授業の名を冠していても完全にお遊びだし、スネイプ先生としてはスリザリン生がそういうものに現を抜かすことはあまり好んでいなさそう。
オブラートでしっかり包みつつスネイプ先生の評価を述べてみると、パンジーも同意してくれた。だよね、やっぱり忌々しく思っていそうだよね。自分にいい思い出がないから特に思ってそう。ごめんねスネイプ先生、偏見を持っていて。
「ここはひとつ、リゾットに頼んでみるかなあ」
「それがいいんじゃない」
気のない返事だ。
パンジーはつやつやに磨き上げられた爪の様子を見ながら、ぐるりとリビングルームを見まわす。動く写真は一枚も飾られていない。全部が非魔法族のカメラで撮られた、ホグワーツの風景だ。なんか写真を撮られるのに慣れていなさそうだったから、あの子たちにはまだレンズを向けていない。私が言い出せば、きっとなんだかんだで付き合ってくれるんだろうなあとわかっているから提案できないでいる。
どうして動かない写真を飾っているかというと、それはもちろん動いたら目が疲れるからだ。動いているものを追ってしまうのは生物の性。自分の部屋よりもリビングルームにいる時間の方が長いのに、視界の端をちらちら動かれてはたまらん。
「ところで」
小指を差し添え、音が立たないようにグラスを置くと、パンジーはきつい眼差しで私をにらんだ。思わず居住まいを正す。ついでに暑苦しいと言われてしまったのでパンジーからちょっと距離を取った。ごめんね私女の子の近くに寄りたいタイプなんだ。トリッシュにもそれでかなり迷惑をかけた。アレ、ブチャラティにも迷惑かけてたな。リゾットにもかけてたし。頭の中で訂正する。ごめんね私、好きな人の近くに寄りたいタイプなんだ。
「あんた、ネエロ先生とどういう関係なの?」
どういう、と言われても、今は一応婚約者同士だよ。
どの辺りを詳しく聞きたいのかなと探りかねていると、パンジーは私の肩を曲げた人差し指の関節でぐりぐりと押した。地味に痛い。
「ただの婚約者同士じゃないでしょ。周りからは名目上の関係に見えてるみたいだけど、あたしの目は誤魔化せないわ。あんたたち、……好き合ってるんじゃない?」
なんでわかったんだろう。私、そんなにわかりやすいかな?基本的にはホルマジオやギアッチョ、メローネイルーゾォソルベジェラートプロシュートペッシと変わらない接し方をしているつもりだったけど。教師陣とは適切に距離を保って家でべたべた。生徒仲間とはいつでもどこでもわちゃわちゃ。
「どっちも判りづらいわ。だけど、そもそもあのリゾット・ネエロが本意でない婚約を結ばされて黙っているような魔法使いじゃないっていうのは、ちょっと考えればわかることよ。あんたはまあ……、……バカだからそのまま放置してそうだけど、ネエロ先生は違うでしょ」
「なんかパンジー、年々私への当たりが強くなっているよね」
「付き合っててあげてるのをありがたく思いなさいよ。二年連続で厄介ごとに巻き込まれて、それでもへらへら笑ってるようなやつに遠慮がいるかしら?」
ちょっとは危機感を持てってことですか?心配してくれてるのかな。それとも『あたしの前では弱音を吐いてもいいんだから』みたいな意味が込められている?ツンデレマスターじゃないからちょっとわからないけど、言葉通りの悪意が混じっているんじゃないことは心で理解できたので、マヌケな笑顔と評される微笑みを浮かべておいた。可愛いなこの子。でもなんかごめん、私別に巻き込まれたことに関しては何も感じていないから、弱音とか、勉強が難しいよお助けてスネイプ先生ー、程度しか持ってないんだ。そもそも弱音って前世で死亡フラグビンビンだった時期に吐き終えたからもう大丈夫だよ。
諸々の思考はおくびにも出さない。それくらいは年の功で余裕です。ウッ切ない。
パンジーの洞察はかなりするどい。
そう、彼女の言う通り、リゾット・ネエロという人物がこの婚約を受け入れた時点で、そこには何らかの意図があるのだ。そして彼は私を忌避する様子はない。家柄目当てで血を結ぶような男ではないと知っている魔女魔法使いマグルハウスエルフ、誰でもいいけど、リゾット・ネエロを知る者ならば、この『名目』という前置きに疑問を抱くべきなのである。
だけど、先んじて公表されたこの関係に、指摘の声が入ったことは今までに一度もない。クリスマスから半年以上が経っているが、パンジーが初めてだ。みんなわかっていて黙っているのか、私たちの狙い通りに誤解してくれているのか。
まあどっちでもいいんだけどね。誤解してくれていようと、大人の沈黙を選んでくれているのであろうと、私たちがこんな七面倒な話を組み上げたのは結局が『お互いに迷惑が掛からないように』というただそれだけの理由だからだ。特にリゾットね。うっかり間違えると、『昔一緒に遊んだだけの幼女に十年以上も想いを募らせて恋人も作らなかったロリコン』というレッテルがね。それは避けたい。それだけは避けたい。これは私が生まれてくる時期を間違えたとしか言いようがないね。ごめんよリゾット。世間的にみると君はロリコンだ。ロリコンリゾットという謎の響きに頭の中で壁を殴った。笑うな、私。
「……」
少女は黙って私の言葉を待っている。私が正直に話すかそれともはぐらかすか、反応を待っている。いつもの愛想のない小型犬のような顔をして、むっつりとこちらをにらみつけて待っている。
私はもちろん、黙っていることもできた。沈黙を選んで論点をずらし、パンジーが話が逸れたと気づかないうちにすべてをうやむやにするか、私の血の有用性というものを嘘有り誇張大有りででっち上げ、納得させることもできる。それくらいの話術はたしなんでいるつもりだ。
けれど、この幼い友人に嘘をつくことは、なぜだか非常に躊躇われた。
それは彼女が、私がかの九人以外に作り出したこの世界での初めての友人だったからかもしれない。友達が少なすぎて自分にちょっぴり嫌気がさした。
「実はね、パンジー。……私とリゾットって前世から恋人同士なのよ」
「真面目に答えて」
「ごめんなさい」
あまりにも正直に言いすぎた。
怒られてしまったのでいくつかキーワードになる単語を交えて、大事な部分は黒線を入れて規制しながら説明する。
五分くらい言葉を尽くしていたら、パンジーは自分の中で結論を出したようだった。
「ネエロ先生の趣味があんたみたいなつるぺたとはね」
やっぱり誤解を招いてしまったらしい。リゾットは犠牲になったのだ。
「一応私、パンジーよりおっぱいあるよ」
「うるさい」
気にしてたのか。

夏休みをエンジョイしていたらルシウス・マルフォイさんからメールが届いた。メールと言ってもマグル嫌い科学嫌いのおじさまなのでもちろん羊皮紙の方のメールだ。私がマグルのコミックスを読みふけるそっち系の女子だと知ったらどうするんだろうこの人。卒倒するんじゃねえかな。
手紙の内容は簡単で、これからも私のことを頼ってくれて構わないから気軽に家に遊びに来なさい、ということだった。額縁に入れて飾りたいくらいとても綺麗な筆記体だった。手紙の返事を書くのが恥ずかしくなる。私の書くPはぎこちないからね。最後のサインは家名で済ませてしまおうか。でも、相手はきちんと『ルシウス』と名前で書いてくれているのだしここは私も名前で書くべきなのだろう。なにせ親しくしようねというお誘いのメールなのだから。
羽根のつやが素晴らしいフクロウにフクロウフーズを食べさせる。安物でごめんね、私フクロウとか飼ってないからさ。
どうして私がペットを飼わないのかって。そりゃもちろん、育てきる自信がないからだ。動物物は駄目なんだってば。死ぬこととか想像しちゃうと飼えないよね。寿命の差というのは埋めがたい。でもフクロウは一羽いると便利だよね。夏休みの間はペッシたんが飼っているフクロウを一羽貸してもらっているけど(彼は三羽のフクロウを飼っている。ちなみに名前は全部魚料理からもじられていた)学校にいる間は少し離れたフクロウの塔まで行かないといけないからちょっと面倒。まあ、私は外界にお友達がいないぼっちガールだからそんなにメールのやりとりをすることもないんだけどさ。
ぎこちないPに苦戦しつつルシウスさんに返事を書いて三日後、彼から返事が寄越された。
同じフクロウが嘴で窓を叩いたので開けて招き入れると、思いっきり顔に体当たりをされた。良い所のフクロウのくせしてしつけがなってないぞ、まったく。持っていたココアを零してしまったので極限にぷんすかだ。でももふもふしていい感じだったからもっかいやってくれないかな。
手紙には簡単な住所が記されていた。
「(今夜夕食を一緒にどうですか)」
要約してみるとそんな感じだ。流麗な、読みづらいほど美しい筆記体からは、まさか拒まれるだなんて思っていない傲慢さが伝わってくるようだった。こういうタイプって近くにいなかったから新鮮だ。貴族って面白いなあ。ルシウスさんが特別に面白いのかもしれない。
断られることなど考えていないルシウスさんのお手紙には、NOの選択肢をどのようにして表すかの手がかりなんて書かれていなかった。つまり私がNOを示して家に閉じこもっていれば、ルシウスさんたちは夕食の席で待ちぼうけを食らうことになるのである。見てみたいわ。
しかしオッサンのポカン顔を楽しむ趣味はちょっとしかないので、今回は素直に応じることにした。うん、ちょっとはあるよ。そういう欲望。誰にだってあると思う。
夕刻を待って服を着替える。はー、おしゃれしないといけないって大変だ。女子力。
緑色の炎に踏み込んで指定された住所を口にすると、ぐるぐると世界が回転する。激しくグロッキー。これ満腹の状態で体験したら出た瞬間吐いちゃうんじゃないかなあ。いつになったら慣れるんだろう。
いささか悪くなった顔色は、電灯のない部屋のどことない薄暗さにカバーされて誰にも見つけられないようだった。
「よく来たね、ポルポ。今日はミスパーキンソンもドラコのパートナーとして呼んでいるんだよ。君たちは確か親しかっただろう?知らない場所でも安心できるかと思ってね」
饒舌に迎え入れてくれたのはマルフォイ家のご当主。イエス、ルシウス・マルフォイだった。銀と緑を主体にしたシックな詰襟は上品で、彼の長いプラチナブロンドの髪に合っている。生え際がヤバいと揶揄されることの多いマルフォイ氏だけど、私から見れば全然そんなことはない。さんじゅ、いや四十代でしょ?まだまだ若いって。誰に対しての何のフォローかはよくわからないけど、とにかく全然不自然じゃないよ、生え際。大丈夫。
「ああ、これは私の妻だ。……ナルシッサ」
隣にいる奥さんと思しき女性とルシウスさんを見比べていると(どこを、とはあえて言うまい)その視線を勘違いした彼は奥さんを軽く前に押し出した。髪を編み上げ、黒いドレスローブに身を包んだ女性は礼と共に名を名乗る。
ナルシッサ・マルフォイ。彼女はヴォルデモートを倒す重要な一手を担う女性だ。確か最終局面でハリーが死んだかどうかを確かめる役目を買って出て、死んでいないのに死んだと申告しヴォルデモート一行を歓喜で湧き立たせたあと、家族全員で逃走したんだよね。気弱そうに見えるけど、息子の為ならやはり母は強くなれるのかしらね。したたかでとてもベネ。好きだよ、そういうの。混乱の渦に叩き落とされたヴォルデモート一行に愉悦しているわけではない。
「ポルポです。本日はお招きくださってありがとうございます」
「そういう固い言葉はなしにしようじゃないか。私たちを親戚のように思ってくれていいのだよ」
オッサンの押しが強い。まあ、なんかネエロさんちのリゾットくんが子供の頃から付き合ってたらしいから、そのリゾットくんと婚約を結ぶ私にも何かこう、ね、親しい感じをね。特に持ちたいのかもしれないね。家の繋がりとかは抜きで考えてみるとさ。
「じゃあ、……そうですね。ルシウスさんとナルシッサさんと呼ばせてもらいます」
少し口調をざっぱにしてみると、ルシウスさんは見定めるように目を細めた。
ここで舐められてたまるか。この人私より年下だぜ、悲しいことに。余裕をもって精一杯優雅に見つめ返しておいた。

オーブンを使う料理がいっぱい出て来た。オーブンと言われるとレンジでチンしてオーブンでブンのコピペを思い出して腹筋が痛くなるんだけど、今回は耐えた。大人だからさ!
パンジーとドラコ君から私の胃袋について聞いていたのか、料理はたっぷり用意されていた。しかしルシウスさん自ら取り分けてくれているのでおかわりと気軽に言えない空気。
「遠慮しないでもっと食べなさいな、ポルポ」
「そうよ、あんたそんなんで後からぶっ倒れられてもあたしたちが困るわ」
パンジーの口調がかなりざっくばらんだったので驚いた。そうかあ、パーキンソン家とマルフォイ家ってそんなに親しかったのか。子供だから許されているところもあるんだろうけど、それにしても意外だ。
遠慮なく食べることにしたけど、給仕を任せきりにしているのもやっぱり気が咎める。しかし自分でやるのもお貴族的にはよろしくないのかなあと困っていると、困っている私を見かねたナルシッサさんがハウスエルフ、いわゆる屋敷しもべ妖精に取り皿の配給を言いつけた。
屋敷しもべ妖精、というとドビーか!?と私はかなり期待をしたのだけど、妖精の名前を訊ねると全然知らない答えが返って来た。キャシーとか聞いたことないわ。よく考えたらドビーは昨年度末にルシウスさんがうっかり解雇してしまったんでしたね。新しく雇われたのかな。その辺りのことは追及しないでおこう。触らぬ神になんとやら、と言うではないか。
そこではた、と思い当った。
ルシウス・マルフォイさんってこの人、理事会を首になったんじゃなかったっけ。もしかして、だからこそより私の家とのコネクトを強くしておきたいのか?えーっと、一見支援しているように見えて、マルフォイ家の周囲を固める純血の血が増えれば増えるほどそれはマルフォイ家の威光を示すことになるから、あああ難しい。偉い人って難解だ。
首になってもこうしてお食事会を開けるだけの財産はあるのか、なんて下世話なことを考えてしまったが、それはうちも同じだった。
「ドラコから聞いてはいたが、君の胃袋は沼のようだね」
それ絶対褒めてないよな。
「『家族』と食べる食事なんて久しぶりで、余計においしく感じたのかもしれませんねー」
まあみんなとはいっつもご飯を一緒に食べてるんだけど。
テキトーに子供のようなことを言うと、ルシウス・マルフォイは嫌みを止めざるを得なくなった。ナルシッサさんからの叱責の視線も、パンジーからのちょっぴり冷ややかな眼差しも加わって居心地が悪そうだ。やはり少女の姿というのは強烈ですな。小さい女の子相手にチクチクやっているのって凄く罪悪感が湧くもんね。
「なんだかルシウスさんは他人って言う気がしませんね。ドラコ君はルシウスさんのことがすごく好きみたいで、いつもお父さんのお話をしてくれるんです。だから私までルシウスさんのことを何でも知っているような気持ちになっちゃって」
積極的に媚びて行く所存。
パンジーの呆れたような表情は幸いなことに誰も見ておらず、視線は私に集中している。ここに固有結界を張ろう。
「こうして実際にお話ししてみると余計にそう思いますよ、ルシウスさん。あなたは『お父さん』という感じがしますね。ドラコ君のお父さんであり、パンジーの未来のお義父さんであり、一家の頼れるおとうさん。そして同時に、ナルシッサさんの旦那さんでもある。いくつもの重大な役目を背負った男性の方の中でも、特別なように感じるかなあ」
臆病と言われても、最終的には家族を選んだ彼のことは素直に好きと言える。まあいけすかないキャラクターだったけど、こうして純血の名家の一員として向かい合ってみると無害でイイネ!あとご飯がおいしい。好きだよ。
ルシウスさんは一瞬沈黙して、ドラコ君を見た。ドラコ君は自分が学校で父親の話ばかりをしていると私に暴露されたせいで顔を真っ赤にして俯いてしまっていてとても可愛いんだけど、ルシウスさんが少年の照れ顔に父性を感じたかどうかはわからない。ただ薄い微笑みを唇にのせて、そうかい、と一つ頷いただけだった。
「そう、見えるのか」
ワイングラスを手に取って、もう一度呟いたので、私はナルシッサさんと目を合わせてから、そうっすよ、と大雑把に肯定した。良いことを言った私の評価を上げてくれ。