10 難易度:マニアック



ライブラの人たちは定期的に私とポッドを事務所に呼ぶくせに、こちらに近づかないように一定の距離を置いている気がしてならない。
「どう思う?」
「人型の存在に対しての警戒が極度に弱いの成長に期待が持てる」
「そーいう話じゃないんですけど」
ちょいちょい私を甘く見てくるのはなんなの?否定はできないけど傷つく。
でもこれはポッドからめたくそな評価を下される私ですら察せるんだから、他の人からしたら明らかに確信できる状況なのだろう。

飽きもせず招待された事務所の一角でお茶請けのパウンドケーキを食べながら、笑顔を向けられるたびに心が冷えていく。
や、パウンドケーキはおいしい。めっちゃくちゃおいしいんだよ。ごろりと混ぜ込まれたクルミのカケラが特にたまんない。
しかし歯ごたえのあるそれを噛み砕いて場を凌ぐのも限界だ。
「あのー……」
「なんだい?」
「……なんでもないです」
裏も表もなさそうな優しい笑みを向けられると何も言えない。
ぶっちゃけてしまうと私は頭がよくない。だから『警戒されている』のはわかっても何を求められてるのかはわかんなくて、こんなマンツーマンな面接風の空気を読んで的確な対応をすることなんてできないのだ。
面と向かってるんだから、面と向かって言えばいいじゃん。
慣れない腹の探り合いにはわけもないストレスと苛立ちがこみ上げてくる。こっちはお腹になんにも抱えてないっていうのに、ただ家に帰りたいだけなのに、なんなワケ?聞きたいこととかして欲しいこととかして欲しくないことがあるならハッキリ言えば!?
……なあんてキレれたら楽なのだが、そこまでの度胸はなかった。無い無い尽くしで自分が嫌になる。まったく、異世界まで来て自分を嫌いになりたくない。
考えれば考えるほどムカムカしてくる胸のあたりをこっそり手でさすった。
ジュースをぐっと飲みほして、息を吸い込む。
負けは承知の上でも、このままモヤモヤしていたくなんかない。
よしポッド、いくぞ!
「あの!」
「うん?」
「私たち、家に帰りたいだけなんですけど!」
「そうだね。僕たちもできる限りサポートさせてもらいたいと思ってるよ」
「……特に裏とかないんですけど!」
「うん、わかってるよ。急にどうしたんだい?……誰かにひどいことでも言われたのかな」
いえ原因はあなたたちです!超悲しそうに眉を動かすのはやめてほしい!!私が悪いことしてる感じがするから!!
ぐっと怯んだところに畳み掛けられる。
「こんな世界で生活しなくちゃいけなくなって緊張する気持ちは、僕なんかが簡単に『わかる』と言うと君たちには失礼なくらいつらいものだろうね。僕たちも一刻も早くこの事件を解決して君たちを……を安心させたいと思ってる。申し訳ないことにまだ原因を突き止めるには至っていないけど、必ずやり遂げてみせると約束する。誰に何を言われたかは知らないけど僕たちは2人の味方だよ。……ここはたちにとってわからないものばかりの世界だ。だからせめて、僕たちの前では心を安らかにして欲しい」
立ち向かう気力がなくなってきた。ダメだ負ける。何もかもがどうでもよくなってくる。ヤバい。まるでこの人は、スティーブンさんは私たちの絶対的な味方であるように思えてくる。スティーブンさんってめっちゃ良い人じゃん。あれ?もしかして私、疲れてたせいで疑心暗鬼に陥ってたのかな?失礼な態度とっちゃったかも。
「す、すみませんでした!」
「ん?が謝罪するようなことなんて何もないだろ?」
「いえ、私ちょっと……ライブラの皆さんをうまく信用できてなくて勝手にイライラしちゃって、スティーブンさんに当たっちゃって」
「気を張るのは当然だ。むしろそれは必要なことだよ。僕は気にしてないし……、あ、でもが気になるなら異世界の話や……未来の話なんかを聞かせてくれると嬉しいな。個人的にも興味があってね」
「それくらいでいいなら……、ポッドは?」
の選択に準ずる」
「わかった」
まあ、冷静に考えたら私って本っ当にバカだよね!

ポッドにも指摘された。
「疑問:に理性はあるのか否か」
「ない」
「把握」
もっと心を引き締めよう。