男女逆転ポルポシリーズ
リゾットちゃんが、膝の上に乗って来た。
何が起きたのかまったくわからないまま、彼女の腰にぽすりと手を添えてしまう。アッ細い。引き締まってる。
硬直していると、リゾットちゃんはそのまま私の頭を抱き寄せ、なめらか綺麗でむき出しになっている胸の谷間に押し付けた。抱き寄せられたのでそのまましばらく柔らかさを堪能してしまったが、いやいや、何が起こっているんだ?天変地異か。スタンド使いの仕業か。
「ど、どうしたの、僕を誘惑してる?襲っちゃうよ?」
ヤバいリゾットの胸気持ちいい、とびっくりしたのもつかの間、慌てて軽口をたたいて顔を離す。リゾットはいつも通り、何を考えているのか読み取りづらい眼差しで私を見下ろした。普段は私の方が少し高いんだけど、今は膝の上に乗っかられているので、リゾットの胸の秘された谷間がとてもよく見える。うう、これが目に毒ってやつか。恥ずかしながら興奮するわ。こう見えても私は童貞だぞ。いや、童貞にしか見えないことはわかっているけれど。
「えっと、あんまり男の人にそういうことをしたらダメだよ、リゾット。僕だって男なんだからね」
「襲う気があるのか?」
「アリアリだよ!」
押し倒した瞬間私が死にますけどね。刃物をゲロゲロしながら崩れ落ちて家が血まみれになるわ。メタリカ怖い。
「私はそれでも構わない」
それって、どれ?
あんまりにも唐突な出来事に冷静になってしまう。興奮も覚めたわ。今日のリゾットはどうしたんだ。何かがあったとしか思えない。
確かに私はリゾットのことを、まあ、なんというべきか。率直に表現するなら、好きだ。大好きだ。できれば思いっきりハグをしたいし、手を繋いで一緒に歩いていたいと思う。ほっぺにキスくらいなら許されるんじゃないかな、とも思う。今までは許されて来たし、ここはイタリア。ンなモンは挨拶代わりだ。
でも、『襲うよ』と言っているのに『どうぞ』と言われるのってすごく複雑。
「あのね、リゾットちゃん。別に貞節について君にアレソレ言うつもりはないし、自由にしたらいいとは思うよ。それは君の問題だからさ。でも、僕には冗談でそういうことを言ってほしくない。僕はからかわれることに慣れていないから、申し訳ないけど、ぐらっと来てしまうんだよ。クソ童貞だから……あっ、言葉が汚くてごめん。行動する度胸はないわけだけど」
私が必死に言葉を尽くして、いかに彼女の発言が私に影響を及ぼしクソ童貞たるこの肉体に波紋をもたらすかということを、できる限り丁寧に説明すると、彼女は読めない目をスッと細めた。まつげが長いなあ。関係のないことを考えた私の頬に、リゾットの手が添えられる。すべすべしていた。
「私はお前にこういう冗談を仕掛けるつもりはない」
冗談ではないのなら、本気だっつうのか。それこそ童貞のメンタルにびしばしと鞭を打つ行為ではないだろうか。
リゾットの指が私の唇に触れた。
「六年だ」
「はい?」
真っ直ぐ見つめられて、目を逸らせない。六年とは。
「ポルポ、好きだ。六年間、ずっと好きだった」
たぶん、私は凄く間抜けな顔をしていた。リゾットが少し指に力を込めた。
「返事は今、考えなくてもいい。覚えておいてくれ」
「あの、からかってるわけじゃあないの?」
「お前と同じだ。私は無駄なことはしない」
そりゃそうですよね。えっと、知ってた。でも、いや、それって。ガチだからこそどうしたらいいかわからないよね。ここで私も君のことが好きだって伝えるのも何やらタイミングが悪くないか。男としての甲斐性がない気がする。私は男のアレソレなど、26年間生きて来た聞きかじりの知識しかないけども、これは完璧に時期を逃している、とだけは理解ができた。
「お前は私が嫌いか?」
「い、いあいあいあいあ、なにを言っとるんだ君は……。嫌いだったら近寄らないよ」
むしろ好きなんだって!!今このタイミングじゃなかったか。しまった、また逃した。
焦る私から手が離れ、リゾットは自分の指にキスをした。それから、その指を私の唇に押し当てる。なにこれ。なにこれ。いや、わかるよ。間接キスだね。
眩暈をおぼえてソファに身体を預ける。リゾットが膝の上から退いて、重みがなくなる。唇と頬が熱い気がして、女々しい仕草で顔を覆った。マジかよ。今、私ってばリゾットに手玉に取られた?あ、いや、言葉が悪いな。
いわゆる、告白をされたのか。
濁点をいっぱいつけて叫びたい衝動にかられちゃうね。せめぎあう童貞と処女の意識。ははは、私ってば今は童貞かつ処女じゃん。二つも属性を持っているなんて有利だなあハハハ。
六年ってナニ。六年って。
リゾットは、混乱する私の頭を一度だけ撫でて、落ち着いた足取りでさっさと部屋に戻ってしまった。階段を上る音が遠くに聞こえる。
「(え、ええええ……?)」
あまりの出来事に言葉も出なかった。
私、もしかして、告白されたのか?