もしも×魔法にディアボロがいたら


「ねえボス」
「ヒイッ!!」
呼びかけると、ピンク色に緑の点々を散らばせた毒々しいヘアカラーを持つガタイのいいオッサンはびくりと身をすくませた。
「な……なんだポルポか。わたしを驚かせるな」
あんたが勝手に驚いたんだろ、とは言わない。気持ちわかるってばよ。今も無限に死んでる途中だもんね君。
某ハリーでポッターな生徒が活躍するこの世界に転生したのは私と暗殺チームの彼らだけではなかった。というかもしかしてみんな転生してる可能性が微レ存?と疑念を抱くきっかけになったのがそもそもこいつ、あっこいつとか言っちゃった。この人、ディアボロである。彼は私の養父だ。
両親が早々に他界した私を引き取ったのがディアボロ。引き取った当初は私が"あの"ポルポだとは知らずこちらの遺産目当てに戸籍に手を加えたらしいんだけど、お互いに顔を合わせてびっくりしすぎたディアボロは目の前で玄関のドアをバタンと閉めた。失礼極まりない。
闇の帝王を名乗るヴォルデモートが気に食わないだとか暗殺チームのみんなから粗雑に扱われているだとかそもそも空気扱いだとか私がホグワーツに行っている間は彼もホグワーツの理事会で存分に権力をふるっているようだとか、まあそんなこんなで同居生活をしている私たちだが、一つだけ問題が。それはボスことディアボロが頻繁に死ぬことだった。
いやもう日本語として、いやいや、英語としてもイタリア語としてもおかしいのは解っている。解っているんだけどこのオッサン頻繁に死ぬんだわ。レクイエムで殴られた状態のまま、ある意味でこの世界に"転生"というより"トリップ"してしまった状態のようで、どこまで行っても死にかけるか九割死んでいる。一週間に平均2回は死んでいるんじゃないだろうか。死がゲシュタルト崩壊を起こすわ。誰か死の秘宝持って来てあげて。
「宿題で解らないところがあるんだけど教えてくんない?」
「あ、あぁ……そ、その羽根ペンでわたしの喉元を突き刺したりしないと誓えるのなら教えよう」
「するわけないだろ」
このオッサンが前世で私にしたことは許せてないしチクショウこの野郎と無意味に足を踏みつけたくなる時だってなくはないけど、それはそれこれはこれ。だって一緒に生活しているのにいつまでも虫唾を走らせていては健全な生活が望めない。相手が死んでばっかりいるというのも、私の心が軟化した要因の一つかもしれない。目の前でばこばこ死なれちゃあ同情せざるを得ないじゃないか。


ホグワーツの理事として学校にやって来たディアボロが城の外廊下から転落した。即座にニュースが駆け巡り、全員が彼の死を確信する。確かに彼は死んでいた。草むらの中でピクリとも動かず、もう見るのも嫌なくらい色々と骨が砕けていそうだった。ホグワーツの安全対策もっとしっかりやって。あとディアボロが落ちるきっかけになってしまったアンブリッジの立場が大変なことになりそうだ。
しかしこの学校で知らない者はいない。たまにやってくるディアボロという名前の理事会メンバーは、もう双子三つ子四つ子ってレベルじゃないくらいまったく同じ姿をして、何度も何度も死んでは再び現れるのだということを。知らんのは新任の教師くらいだ。緘口令が敷かれているからね。闇の魔術を使ってもいないのにこんな無限に死んで生き返っちゃう人なんて封印指定モノだ。
「大丈夫?」
私もすっかり慣れたので、ドン引きしながら遠巻きに声をかけた。メローネが冷静に頭がい骨骨折脳内出血鼻骨粉砕骨折あばらも逝ってる、とざっといくつも怪我の内訳を説明してくれたけどもう聞きまくりすぎてだいたい覚えてしまったよ。上から転落したら特に頸椎がヤバいんでしょ、知ってる。
ディアボロはプロシュートによってぞんざいに布をかけられると、その下でゆっくりと復活していった。
私たちがいったんその場を立ち去った後もメローネはじっくり復活の様子を眺めていたようで、もうそろそろだぜ、と日の暮れた校舎裏で教えてくれた。
言葉通り起き上がったディアボロは真っ青な顔をして私に縋りついた。
「転落死だった……」
そうだね、誰が見ても転落死だったね。
「わたしはもういやだ……どうしてこんなことになってしまったんだ……」
「おおかた自業自得だろ」
メローネの辛辣な言葉が突き刺さり、ディアボロはしくしくと泣き始めた。なぜか私があやす形になる。30代から40代のオッサンをあやしている15歳の少女って絵面、ホグワーツの中で浮くから勘弁してほしいね。


私を庇って死の呪文を食らっても倒れないディアボロ。死というゴールへ到達することが出来ないので、彼は緑色の閃光を食らって転んでも数分後には息を吹き返した。ディアボロ起きてここ危ない、とゆさゆさ彼を揺すり続けた私も無事に蘇ってくれて一安心。もう字面も絵面も何もかもおかしい。超!ファンタスティック!
「ば、化け物か!?」
動揺する死喰い人。そりゃそうだよね、私も動揺するわ。
「ポルポを痛めつけていいのはポルポに莫大な金を流し続けたわたしだけだ……!」
そしてこの屈折した意味の解らない理屈である。あとその言い方きわどいので止めてください。まるで私が金で命を売ってるみたいじゃないですか。そんなこと言ってるとイルーゾォが怒っちゃうぞ。
案の定味方の側から緑色の光が飛来してディアボロの足を掠めた。ビビッて飛びのいたディアボロに舌打ちが追い打ちをかける。
「俺に近づいて来るなと言いたいところだったがこの世界は近づいて来なくても死ぬから嫌だァーッ!!」
名前の通り肉の盾となっているディアボロが泣いていた。自業自得の四文字で片付けきれない悲哀がそこにはあった。早く魔法界が平和になるといいね。
「まったくだわたしのポルポ……その暁にはわたしの呪いを解く手段を一緒に探してくれるか……?またわたしと共に頂点を目指してくれるか……?愛しているぞわたしのポルポ……」
うん、どの面下げて言ってんのか一回鏡見てみるといいよ。目指すわけないだろ。








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シリアス……?知らない子ですね……。
お読みくださってありがとうございました。ドッピオくんはおるすばんです。