きらいと言ったら


欠伸をした時にふと思いつき、しばらく経っても好奇心が治まらなかったので思い切って訊いてみた。
「私がリゾットに『嫌い!』って言ったらどうする?悲しむ?泣いちゃう?」
泣いちゃうリゾット、ぜひ見たい。
心にもない悪質なジョークは人を選ぶことにしているので言いはしない。でもこれくらいの質問なら許されると思いたいよ。IFの話だっていうのはお互いに心底からわかりきっているし、リゾットもまったくタイムラグを作らずに口を開いたから、問題はない。
眠る間際の橙色の照明がぼんやりリゾットを照らしている。この人やっぱり格好いい。悔しい。むしゃくしゃしたので目を合わせたままほっぺを撫でた。キュート。この男が私の隣で眠るんだぜ、最高だ。君は水曜日だけじゃなくて毎日私の生活を潤してくれる天使だよ。呟いた声がうっかり恍惚としてしまったが、リゾットは綺麗に無視をした。そういうところも好きだよ。
リゾットも滑らかに手を動かして私の頬に触った。親指で肌を撫でてきたので私はリゾットの腕をナデナデ。癒されていられたのは一瞬だけだった。
「泣くのはお前の方だろうな」
「ん?」
どういうこと。
寝転んだまま向き直ってリゾットに続きを促した。不穏な気配がするので深追いしたくないけど、問いかけたのは私なので問題を宙ぶらりんにしっ放しにするわけにもいかないよな。見つめる赤い瞳はちっとも揺らがなかった。
言おうかな、言わないでおこうかな、みたいなすっとぼけた空気を心なしか醸し出すリゾット。焦らしプレイかよ、逆に早く言ってほしい。いや、今のはまったく逆じゃなかったわ。早く言ってほしい。
「聞かない方が良い」
気になるだろ、常識的に考えて。
「私が泣いちゃうの?」
「その時には既に俺を嫌っているんだろう。泣くんじゃないか?」
「泣くのか……」
何かを察せた気がしてちょっとだけ笑った。オブラートに包んでくれてるのが面白かっただけで、この答えが冗談だろうと本気だろうと、まあその辺りはようわからんのでどうでもいい。リゾットはこの無表情でフツーに私をからかってくるからなあ。
「人には色々あるわね」
「そうだな」
デコにチューが一発落とされ、それきり会話は途切れた。私もリゾットの指にお返しをしておく。

寝て起きて思ったんだけど、本当に彼はナニをするつもりなんだろう。答えは永遠に見つからなそうなので(何せあの仮定が成立しない)リゾットにハグをして、ついでに光をかざして躊躇いを消して全部忘れることにした。朝食は少し豪華だった。