もしもポルポがキュゥベえだったら2
言っておくべきなのかな、きゅっぷい、と。
ドキドキしながらあたりを見まわしたけど、どうしても勇気が出なかったので、喉まで出かかった台詞は呑み込んだ。
私は傷ついていないし、まどかっちにテレパシーを送ってもいない。マミさんの胸に抱えられてもいない。僕と契約して以下略。言ってない言ってない。言う予定もない。
「あなた……一体何者なの?」
チャカは勘弁して欲しい。お互いの為にもやめておこうね。ソウルジェムをきらっきらに輝かせて君に襲い掛かる魔法少女、いや、少女じゃないや。野郎ども、っていうのも可哀想だけど、魔法オッサンたちがソウルジェムをきらきらさせながら魔法を発動しちゃうぞ。言っておくが私のSPは強い。数もある。オッサンって言ったの本当に可哀想だったな、ごめん。私もオバサンになっちゃうね。若いんですよ、私たち。
暁美ほむらは戸惑う。理由は言うまでもなく、私がいるからだ。キュゥベえがいるはずの位置に私が立ち、魔法を使えるイケメンたちをはべらせながら尻尾をふさふささせてご飯を食べていれば驚くし、不審に思う。
見滝原の夜をテキトーな屋根の上から見ている私がふさふさきゅっぷいだったことに疑念を抱いた暁美ほむらは、魔法少女に変身して私の後頭部に拳銃を突きつけた。
「あなた、何者なの。私はあなたを知らない」
暁美ほむら、それはどういう意味だい、君の行動には不審な点が多い、などと下種耳毛セールスマンのような言葉を吐いたが最後、私の額には風穴があく。真剣に回答を考え、先人の教えに倣った。
「君も食べる?」
警戒を緩めない少女は、それでも私の手からペロキャンを受け取ってくれた。ありがとう、先人たち。ありがとう、杏子ちゃん。時間を止められたら最後だった。
でも、気まずい。
米神に銃口を押し付けられながら食べる芋けんぴのまずさったら。
辺り障りなく、あなたたちに関与するつもりはありませんよ、と伝えてみたけど、信用はされない。ほむほむはペロキャンにも手をつけていない。そりゃあここまで見るからにインキュベーターだったら仕方がないよね。本来なら交渉の余地もなく撃ち抜かれているだろう。こちらがまどかちゃんに接触していないから、まだ様子見の余裕があるだけでさ。YOU、もう全員でハッピーエンド目指しちゃう?と持ち掛けてみたい気持ちは山々だけど、そうするとたぶん私が殺されるよな。上の方から。魔法少女を九人一気に量産したので今はウハウハ生活だけど。
「私はあなたを信用しない」
そりゃそうやな。
「"あなた"になら忠告が届くかしら。こちらの領域に手を出したら……」
暁美ほむらが立ち上がる。容赦なくトリガーが引かれる。マジかよと思った瞬間、私の腕に糸が絡まり、ひょいっと釣り上げてもらえた。不利を感じて走り去ったほむらちゃんを追うつもりはないけど、追跡されていたら可哀想だなとちょっと思った。
「大丈夫?」
「ありがとう、ペッシ」
「知らない人に脅されたら俺たちの誰かを呼ばないと」
怒られちゃった。ちょっとびっくりしたけど、身体の替えはあるからいいかなと一瞬驕ったのも事実だ。ごめんごめんと謝ると、ペッシは釣糸を消して眉間にしわを寄せた。リーダーにバレたら叱られるよと言いたいようだ。秘密にしておいてねと言うと、ええっ、と大げさに驚かれた。