もしもポルポが男で、10人目の暗殺チームのメンバーだったら


水と偽って酒を飲ませた男友達にあっさり見捨てられた十八の夜。
ふらふらに酔わされていた私は、普段通ってはいけないと言われている道を歩いてしまった。そこで事件に巻き込まれ、パッショーネというパッション極まりないネームを持つ組織に引っ張り込まれることになる。全力で逃げようとしても無駄だったので、私はそのうち考えるのをやめた。
チームに配属されたのは、これまた無理やりスタンド能力を目覚めさせられたひと月後だった。そこで私はようやくここがいったいどんな世界であるのかを理解したのだけど、その辺りについては割愛しよう。
暗殺チームに所属する私が暗殺に出たことは一度もない。なんじゃそら、と思わなくもないけど、まあ、物騒なお仕事にはたぶん向いていないので、事務処理専門のポルポくんとしてチームのアジトで仲間をいたわるマスコットキャラクターを自称しておいている。

あれは今から三十六万、いや、一万四千年前のことだったか。ごめん、誇張した。えー、順繰りに言えば、一番初めは半年前のことだ。
ざっと私を上から下まで眺めたリゾット・ネエロは険しい顔をした。たぶん、私の服装が中性的すぎたのが悪かったんだと思う。真剣に働こうとしていたのに、初っ端の部下としてなよなよしていてへらへらしていて薄っぺらい身体の男が来たら不安になるよね。うん、わかるわかる。恨んでないよ。
「……女か?」
「逆にごめん」
定期的に持ち出してネタにするけど、笑い話にしているだけで、恨んでないってば。本当だよ、リゾット。
私はあまりにも女性っぽい格好をしていた黒歴史をリゾットに掴まれているが、私だってリゾットの黒歴史を掴んでいる。
いつも通りのある日のこと、リゾットは突然服装を変えた。
確かにね。『暗殺チーム』の『リゾット・ネエロ』にしては随分とシンプルな恰好をしているなとは思ったことがある。でもその時までは、ただの気のせいかなあ、とか、アレは戦闘服で、事務員の私にはわからない領分なのかな、くらいの気持ちだったのだ。
「どうしたのリゾット、イメチェン?」
今から思うと信じられないくらいに苦い顔をして、リゾットは私から目を逸らした。
「そういう趣味なの?」
「お前に関係があるか?」
「気になっただけだから答えなくてもいいよ」
リゾットは結局何も言わなかったけれど、ただのシュミなのか、上層部から支給されたのか。どちらにしても似合っているから問題ないと思うよ、と笑顔を向けておいた。しっくり来るしね。
しかしこれで、服装についてはイーブンとなったわけだ。

次に加入したのはプロシュートだった。ほぼ同時期に、ホルマジオとソルジェラ。前者は二人とも、開口一番似たようなことを言った。
「女かよ」
そして私も同じ言葉を返した。
「逆にごめん」
この時はもう中性的な洋服を着るのはやめていたし、髪の毛だってそれなりに短く整えていた。でも、どうにも見た目がなよっちいのだそうだ。理不尽に怒られたので間違いない。弱弱しくてへなへなしていて、筋肉ついてんのかテメー、といじくられる毎日だった。ムッとしたので頑張って三日間続けて腕立て伏せをしてみたが、筋肉痛で字がミミズのようになったのでやめた。リゾットに泣きついたら、ぐにぐにと腕を揉まれて、ないな、と言われた。たぶん、筋肉と根性の話だと思う。
「テメーはよぉー、ポルポ。リゾットにばっかり頼ってんじゃねえぞ」
「えっ、そうかな?僕、リゾットに頼りすぎ?」
プロシュートは私の肩を叩いた。
「とりあえず、朝メシと昼メシと夕メシを毎日食いに行くのをやめろ。たまに来るたびにリゾットのメシが上手くなって行ってんじゃねえかよ」
「毎日じゃあないけど……」
気をつけよう。リゾットの女子力がガンガン上がってしまっている。殊勝にしていると、視界の端でソルジェラが激しく膝を叩いて笑っていた。

続いて入って来たイルーゾォ、メローネ、ギアッチョの三名も、おおよそ似たような顔をした。
「暗殺チームに戦えねえ女が必要か?」
前半部分には同意するけど、今の私は女じゃあないので、全面的には頷けない。特に誰が悪いわけではないんだけど、なんとなくそういう流れかなと感じて謝罪してしまった。
「逆にごめん」
誤解はさっさと解けたのだけど、彼らの胡乱な表情はまだ続いている。たぶん、私の陰なる努力を知らないんだな。ホルマジオに手伝ってもらいながら腹筋運動だって頑張っているし、毎日目が痛くなるまで書類と格闘しているのに。まったく、少年たちの心は難しい。イルーゾォは私と同い年だけどさ。まだ二十歳だからさあ、何もかも大目に見てしまうよね。いや、同い年なんだけど。同い年なんだけどね。深く考えるのはやめよう、私はオバサンでもオジサンでもないです。
「仲良くしろよ、新人と」
「そうそう」
毎日のようにソルベとジェラートにいじくりまわされているんだけど、これって、私だけが悪いのかなあ。またリゾットに慰めてもらいたかったけど、あんまり頼るなよとプロシュートに忠告されたのを思い出して踵を返した。代わりに三人の所に行って、コミュニケートでも図るとしよう。