**
本編後 付き合っている
細かいことは考えないでください
ドントシンク フィール
*
どん、と空気を揺るがす音は霧の向こうから響いてくるようで現実味がない。
間を空けず立ち上るのは光をまとった頼りない一筋の煙。まさかこれが大輪の花を咲かせる茎だとは誰も信じないだろうと思うほどか細く、情けない鳴き声を上げた。
パラパラ、音を立てて火花が散る。光が見る人の瞳を、顔を照らし出して、宵闇は束の間の明るさに彩られた。
広々としたテラスから空を見上げる私は、耳に当てたスマホに向けて夢見心地な声で言った。
「綺麗だね」
「うん」
返事は短く、相手が本当に同じ花火を見ているのかもわからない。もしかしたら彼は地下かどこかにいるか、カーテンを閉め切った個室で仕事をしているか、考えづらいが誰か別の相手と寄り添いながら夜空を飾り一瞬で散る火花を眺めているのかもしれない。その隙を見て電話を受けてくれているのかも。うーん、ありがとうございますって言えば良いのかな。隣にいるのは私がいい!なんてワガママは口にできないし。
「ホントに綺麗。……だよね?」
「うん。君と一緒に見たい」
「わっ……私もスティーブンと一緒に見たかったな!」
「ありがとう。……それで、良ければなんだけど」
「うん」
「ドアチェーン、外してもらえるかい?」
「えっ?」
最近は物騒だからと掛けてみたものだ。寝る前に外そうと思って(……フツー逆だよね!)花火を見る間は放置していた。
どん、と響いた大きな音が私の慌てた足音をかき消した。
つんのめるように廊下を走り抜けて玄関のドアにかじりつくと、ドアの鍵が開いていた。
レンズを覗き込めば、そこには。
もたつく手つきでチェーンを外す。
「スティーブン!?何してるの!?」
「ただいま。締め出されたかと思って過去の悪業を振り返っていたところだよ」
そ、そうですか。
彼はドアのオートロックを確かめてから私の手を取った。どきりと高鳴ったこちらの鼓動など知りもせず、もしくはわかっていても無視を決め込んでテラスへ向かう。
外へ近づくにつれて、音と光が鮮明に五感を刺激した。
見上げた空には大輪の花がいくつも咲き誇る。
それよりも繋がれたままの手のほうが気にならなくもなかったが、ちらっと横目で窺った彼の横顔は一心に夜空へ向けられていたから、私も夏の風物詩を眺めることに集中した。
スティーブンの視線が私のそれと入れ替わるように隣へ向けられて、しばらくこちらを眺めていたことには、最後まで気がつかなかった。
細かいことは考えないでください
ドントシンク フィール
*
どん、と空気を揺るがす音は霧の向こうから響いてくるようで現実味がない。
間を空けず立ち上るのは光をまとった頼りない一筋の煙。まさかこれが大輪の花を咲かせる茎だとは誰も信じないだろうと思うほどか細く、情けない鳴き声を上げた。
パラパラ、音を立てて火花が散る。光が見る人の瞳を、顔を照らし出して、宵闇は束の間の明るさに彩られた。
広々としたテラスから空を見上げる私は、耳に当てたスマホに向けて夢見心地な声で言った。
「綺麗だね」
「うん」
返事は短く、相手が本当に同じ花火を見ているのかもわからない。もしかしたら彼は地下かどこかにいるか、カーテンを閉め切った個室で仕事をしているか、考えづらいが誰か別の相手と寄り添いながら夜空を飾り一瞬で散る火花を眺めているのかもしれない。その隙を見て電話を受けてくれているのかも。うーん、ありがとうございますって言えば良いのかな。隣にいるのは私がいい!なんてワガママは口にできないし。
「ホントに綺麗。……だよね?」
「うん。君と一緒に見たい」
「わっ……私もスティーブンと一緒に見たかったな!」
「ありがとう。……それで、良ければなんだけど」
「うん」
「ドアチェーン、外してもらえるかい?」
「えっ?」
最近は物騒だからと掛けてみたものだ。寝る前に外そうと思って(……フツー逆だよね!)花火を見る間は放置していた。
どん、と響いた大きな音が私の慌てた足音をかき消した。
つんのめるように廊下を走り抜けて玄関のドアにかじりつくと、ドアの鍵が開いていた。
レンズを覗き込めば、そこには。
もたつく手つきでチェーンを外す。
「スティーブン!?何してるの!?」
「ただいま。締め出されたかと思って過去の悪業を振り返っていたところだよ」
そ、そうですか。
彼はドアのオートロックを確かめてから私の手を取った。どきりと高鳴ったこちらの鼓動など知りもせず、もしくはわかっていても無視を決め込んでテラスへ向かう。
外へ近づくにつれて、音と光が鮮明に五感を刺激した。
見上げた空には大輪の花がいくつも咲き誇る。
それよりも繋がれたままの手のほうが気にならなくもなかったが、ちらっと横目で窺った彼の横顔は一心に夜空へ向けられていたから、私も夏の風物詩を眺めることに集中した。
スティーブンの視線が私のそれと入れ替わるように隣へ向けられて、しばらくこちらを眺めていたことには、最後まで気がつかなかった。
----