02
壁に押し付けられるなら、もっと甘やかな空気の中で。愛の言葉を囁きながらだったら本当に大歓迎なのに、なんでこんな小汚い通りの塗装がはげかけた壁に剣呑な気配とともに押し付けられなきゃならないのか。私は泣きそうだった。こわい。すごくこわい。
「さて。俺はこう見えて忙しくてね。あまり君に割く時間がないんだ」
「『僕』って言って!怖いから!」
「だからできるだけ手短に答えてくれ。僕も手荒なことはしたくないんだ」
あっ意外と優しいな!うっかりまた転びそうになったけどすんでのところで踏みとどまった。自分のフワフワな脳みそが憎い。ああ、なんだかクラクラしてきた。冷や汗で脱水症状を起こしそうだ。
「あの、飲み物……ください」
「すべてが終わったらあげるよ」
「人生が!?それ死に水!?」
「想像力が豊かだなあ」
スティーブンが少し目を細める。その表情はデートの間に何度か見たもので、ワガママな子供を宥めるような色がある。私は気に食わないと思うと同時に結構それが好きだった。
ときめきを思い出して悲しくなる。ああ、私のバカ。パパの情報や組織のアレソレが絡まない、普通の恋愛をしたかった。けれどパパの情報や組織のアレソレが絡んでいなければ、私はこの素晴らしくテクニカルで優しく(……優しかった!)経験豊富な男性と夢のようなお付き合いなどできなかった。異世界での心の癒しとなっていたので本当に胸が苦しい。なんという小規模な悲劇だろう。
「君の出自を調べたんだ。入国記録も戸籍もなく、『パパ』に拾われた経緯もわからない。どうやってヘルサレムズ・ロットにやって来た?異界からか?」
「えっと、異界から来てたほうが都合がいい、の?だったら異界から来ました!」
混乱した私に、イケメンがちょっとだけ笑いかけた。
「君のそういうところは好きだったよ」
「過去形!もっと優しくして!!どうせ殺すなら甘い夢を見させながら殺して!」
「そうすれば黙って喋るかい?」
「矛盾してる!!」
唇まで青ざめる。けれど、言いたくない。明らかにこのままだと私は死ぬし、もしかしたら世にも恐ろしい幻想的な拷問にかけられるのかもしれない。幸せな夢を見ながら今すぐ眠るように死にたい。
極度の緊張が私の身体をおかしくした。
胃袋が泣き声をあげる。
私は沈黙した。イケメンの視線が私の薄っぺらい腹に向かう。自慢のくびれはワンピースのラインに隠れて見えない。
張り詰めた空気が緩んだ。
「君らしいな」
私の何を知っているというのだ。
こちらの腕を拘束していた手がゆっくりと離れた。まさか、絆されてくれたのか。お腹のひとつも鳴らしてみるものだと自分の身体に感謝する。警戒はされたままなのに、目に見えて緊迫が薄れ、ホッとした。
「そうだな。あまり時間はないが、食事でも行こうか」
「……は、……はあ?」
「腹が減ってるんだろ?僕も空腹なんだ。ちょうど昼休憩をもらっていてね。せっかくだからどこかへ食べに行こうと思って。ほら、君が僕を見つけた通りにあったイタリアンレストラン」
「え、あ、はあ、あ、……ええ?」
和やかに食事に誘われてしまった。
行く以外の選択肢は、ない。
連れられて入ったレストランは、とても感じのいいお店だった。明るい店内でもどちらかというと薄暗い席に案内される。あそこがいい、とスティーブンが指定した結果だった。
何度か来ているのか、メニューにはそれほど真剣に目を通していない。私は渡されたメニュー表の文字が目から滑り落ちていくのを感じながら、めまいがする頭でかろうじて「ジェ、ジェノベーゼ」と注文を絞り出した。
炭酸水が提供され、自分の喉がカラカラだったことを思い出す。青ざめ、冷たくなった指先でグラスに手をのばす。
すると、向かいの席から長い腕がぬっと伸び、私のグラスを横取りしてしまった。
唖然とする。
「すべてが終わってからだって言ったよな?」
鬼がいた。
きっと私の顔はこの数十分でかなり老け込んだに違いない。パパに「顔さえなければなあ」と言わしめたこの顔面、自分ではそこまでひどいとは思っていなかったが、きっと今は異性に見せるなんてとんでもないほどやつれている。
両手で顔を覆って項垂れた。話したって信じてもらえるはずがないし、裏を隠していると疑われてえもいわれぬ拷問にかけられるに違いない。
悲嘆にくれる私を見かねたか、面倒になったか、たぶん後者なのだろうけど、お行儀のいい長い脚が私のパンプスのつま先を軽く蹴った。ぞぞぞと鳥肌が立つ。なんだっけ、靴がヤバイんだったっけ。それとも足? おぼろげな記憶を引っ張り出す。合っている自信はなかった。
「料理が来るまでに答えてくれ。でなきゃ、お互いに冷めたパスタを食わなきゃいけなくなる。知っているか知らないかはわからないが、僕は『冷ます』のが得意でね」
レストラン全体がこの男の所有物で、私の動向を睨みつけるように見つめている気がした。
小市民的精神は、この圧力に耐えられなかった。むしろよくぞここまで持ち堪えたと褒めるべきだ。
私は両手の中で口を動かし、くぐもった告白を述べた。
「し、信じてもらえないとは思うんだけど、……思うんですけど……」
慣れない丁寧な口調を保とうとする私を、誰も笑ってくれなかった。
「私、ここじゃない世界から来たみたいなんです」
目の前のイケメンはイケメンにのみ許される鷹揚さで炭酸水を飲んだ。
「異界でもなく?」
「なく」
ヘルサレムズ・ロットを描いた漫画があるのだから、まごうことなき異世界だ。
「そこにはここのことが描かれた漫画があって……、元カレがそれが好きで。私は全然キョーミなかったんだけど!付き合ってちょっと読んだから、登場人物のことを少しだけ知ってて、それで」
「そこに僕が登場していたってわけか」
物分かりが良すぎて怖い。
私はひとつ、頷いた。
「でもホントに、あんまり真面目に読んでなかったから、単語?とか、用語?とか、憶えてなくて。ていうか、憶えてたら絶対近寄らなかった!」
「そうかな?知っていたとしても、君は僕に惚れそうだけど」
「うわっ!!うわー!イケメンだ!!カッコイイ!やばい!」
「ほら」
「うっ……」
ちょっと角度を変えて流し目で口角を上げたくらいで釣られると思ったら大間違い、と言いたかったけど無理だった。格好いいものは格好いい。好みのタイプだったのも良くなかった。一時とはいえ、深く付き合って愛しちゃったのも良くなかった。何もかもが懐かしくて大好きで、こんなに怖いのに恋の未練と女の執念とは恐ろしいものなんだなと自覚する。頭を振って雑念を飛ばした。いやいや、いやいやいや。無理無理、ありえない。殺されるかどうかの瀬戸際に、頬を染めている場合じゃない。
単純極まりないつくりの年中お花畑な私のおつむと染まった頬が面白かったらしく、スティーブンはまた目元だけで笑った。……ような気がした。気のせいでなければいいなと思う気持ちと、気のせいであれと願う気持ちがルームシェアだ。
「そ、そうじゃなくて」
本題から逸れそうになったのを急いで食い止める。
「私はあなたのことをほんのちょっと知ってるけど、それをどうこうしようなんて気持ちはまったくなくて」
「君にそんなつもりがなくても、この街には君から情報を搾取する色んな方法があるんだ。漫画に描かれていなかったかな」
「パラ読みしかしてないんだってば!」
スティーブンは笑みを引っ込めた。
「他にはどんなことを知っている?」
答えをひとつ間違えれば、このままどこか密室に連れ込まれてしっぽり殺される。そんな気がした。急に空調が強くなったように感じた。足元から立ち上る冷気は錯覚か。水を飲んでいなくてよかった。飲んでいたら、全部戻してしまっていたかもしれない。あっ、コーヒーがお腹に入ってたっけ。あと、朝ごはん。最悪だ。
早くジェノベーゼが運ばれて来るようにと願い、膝の上で手を握りしめた。
「秘密組織、みたいなやつがあって、敵?みたいなのと戦ってるってこと。あと……、あ、そう、リーダーみたいな人がすごく強い。みんな必殺技を持ってる」
「必殺技か。内容は?俺の……」
情けない目力で全力を使って訴えたら言い直してくれた。
「僕の足を見たってことは、ある程度は知ってるんだろ?」
「だ、だってめっちゃ視覚効果すごいし。強そうなんだも、……なんですもん……」
「そう見えるかい?」
「う、うん」
「そう」
にこり。もはや恐怖しか感じられないスマートな笑顔だ。
それで、私はどうなるのか。信じてもらえたのか。
運命を決める問いかけを投げようとしたとき、タイミング悪くウエイターが皿を持ってやって来た。湯気を立てる緑色にまみれたパスタが憎かったが、もともとたいへんシンプルにできているらしい私は、漂う罪深い匂いに鼻をひくつかせた。ああ、いい匂い。泣くほどは空腹ではないつもりだったけど、料理を前にすると気持ちは食一色になる。
さすがにこれは奪われない、はず。
じっと見つめると、スティーブンは「どうぞ」と気のない声で手を動かした。彼が自分のペンネに取り掛かるのを見てから、私もフォークを手に取る。ドキドキと胸が高鳴った。イケメンとふたりでレストランランチ。こんな状況でなければ最高なのに。
「おいしい……」
「良い店だろ? 同僚に教わってね。何度か来てるんだ」
「あとお水が欲しいです」
「……まあいいか。いいよ、飲んで」
ツー、とテーブルの上をグラスが滑る。喜び勇んで一気飲みして激しくむせた。呆れた視線のレーザービームが突き刺さる。
かろうじて瀕死状態から脱し、おいしいパスタに集中する。はあ、美味。
もしかするとこれって最後の晩餐ならぬ最後の昼食?なんていう気もしたけど、頑張って目を逸らした。お、おいしい。おいしいなあ。
「おいしい?」
「おいしいです」
「そりゃあ良かった」
「最後のご飯になるかもしれませんしね!余計においしい!」
「ん?」
「え?」
あれ、大丈夫なのかな?
希望を抱いたのも束の間。スティーブンの唇は無情だった。
「そういうところは冷静なんだな。もっと取り乱すかと思って注意してたんだけど。ほら、別れを切り出したときみたいに」
「あ、あれは……だって、納得できなかったから」
「今は納得してるって?」
「してないけど!!ここまで来たら逃げられなくない!?」
「そうだなあ。あ、顔と髪が違うのも異世界の術か何か?」
「これはパパにやられて……。今になって素顔に戻ったの。あの顔も髪も、美人だったのに」
合計3皿目のプレートが運ばれてきた。拳ほどのお肉の塊がのっていて、ほろほろでおいしそうだ。キョドっていると「食べていいよ」と言われた。や、やけに豪華で大盤振る舞い。やはり死ぬのか。
「それにしても」
ウエイターが去り、スティーブンの言葉がつながる。
「それにしても、異世界人なら話は簡単だったな」
「え?」
「君は何も知らないだろうが、異世界人の寿命は、ここ、ヘルサレムズ・ロットにおいてひどく短い。放っておいても死んでいただろうし、死ぬだろう」
「……は、……え?」
そんな異世界人の存在がこれまでにも何度か観測できたような言い方。寿命ってなに?すぐ死ぬって?
何から言えばいいのかわからない。美形な顔はとても冷めているし、肩をすくめる動きにも温度がない。
「君のように異世界から来たと言う人間はこれまでに数人いた」
「ええ!?」
「片手で足りるほどだが。僕たちが観測できていないだけで、本当はもう少し存在しているのかもしれない。接触があった中でその『漫画』の話を聞いたのは初めてで、早急に確認、対処しなくてはならないとわかったのは助かったよ。君はパラ読みしかしていないらしいが、もっと緻密に読み込んだ人物がこちらに敵対するかもしれない」
「は、はあ、そうですね?」
ジェノベーゼの味がよくわからなくなった。
「寿命が短いっていうのは……?」
「ああ。接触があった『異世界人』は、ヘルサレムズ・ロットに来て数ヶ月と生きないうちに『不慮の事故』『不運な偶然』『どうにもできない事情』によって全員が死亡している」
「……えっ、と……。……あなたが殺害したのではなくて?」
「様子を見ているうちに、全員」
長い指が一本一本折られる。
「ひとりは『不運にも』トラックに撥ねられた。僕の目の前で、何かに引き寄せられるように飛び出して。ひとりは強盗犯の銃撃戦に巻き込まれた。『どうにもできなかった』。ひとりは違法な薬売りってやつに捕まってオーバードーズ。『偶然にも』上から落下したネオンに押しつぶされて路地裏で冷たくなった。ああ、そこの角のところなんだけど」
知りたくなかったので、指差された方向には顔を向けなかった。
「平和な場所からこんな街にやって来てしまったから、というだけではあまりに出来過ぎているだろ?」
「……え、ええー……」
そういえばトリップしてきたとき、私は道路の真ん中にへたり込んでいた。もしも私が『不運』だったなら、あの時点で人生がおじゃんになっただろう。
インプットされた動きをなぞるように、ぎこちなくジェノベーゼを口に運ぶ。機械的に噛んだが、味はわからなかった。
しれっと褒められる。
「君は長生きだ」
まったく嬉しくない。
「初めはどうにかするつもりだったが、君が異世界人だと知った今は、むしろ君を監視下において放置するほうが都合がいいと思っているんだ。異世界人にどんな力が働いて、あるいは何も働かず、いつ何時どういうふうになるのかのデータが取れる。食事に誘って正解だった」
「誘っ、……誘ったかな……」
「うん」
まったく、嬉しくない。
紙を噛むようにパスタを食べていると、お肉を勧められた。食欲は消え失せていたが、どれが最後の食事になるのかわからないと知った今、おいしそうなものを放置する気にもなれない。
取り皿を寄せてナイフを差し込む。浮かせた腰を戻す一瞬、知らず、震えた腕がグラスを引っ掛けた。
あ、と咄嗟に手を出したが届かない。派手な音を立ててガラスが飛び散った。
「あ、わ、ごめんなさい!」
素早く駆け寄ったウエイターと、ナイフを置いたスティーブンが制止したが、うっかり手でガラスを拾ってしまう。お客さま、となかばもぎ取るように危険な欠片を回収され、あわあわと空転する頭が鋭い痛みで覚醒した。
「痛っ」
「っ、と」
指の付け根に一直線の赤い筋が引かれる。ピリリと痛い。
落ち着いたウエイターから手際のよい手当てを受け、あっという間に片付いた床と、新しく出された炭酸水に息を吐く。
「ごめんなさい、騒がしくしちゃって」
「……気にしなくていい」
スティーブンは眉根を寄せて、右手を見つめる。私も、手当てを受けた右手を見た。まだピリピリと痛む。思いのほか、深く切ったのかもしれない。
「君は僕に何かしたか?」
「は?」
真剣な声に顔を上げる。何も覚えがない。情報を流していい思いをさせてもらったくらいだ。むしろ、さっきから何かされているのは私なような気がする。
怒涛のように与えられた情報ととんでもない事実にぼんやりする私を、物騒な色が射抜いた。
ポカンとした顔の私を皮膚の裏側まで刺し貫いた視線は、急に日常の喧騒を取り戻したように勢いを失った。
「何もしていないみたいだな。君は隠し事に向いてない」
「はあ……」
だから何が?
言いたいことが伝わったらしく、スティーブンは右手をこちらに差し出した。
指の付け根に血が滲んでいた。
「え!どうしたの!?大丈夫?絆創膏もらう?」
敬語がすっぽ抜けた。
「君が手を切ったのと同時に切れた」
「は?」
「だから何かされたんじゃないかと思ったんだが、そういうわけでもないらしい。異世界人だからか? だが、そうだとするならなぜ前例がない? なぜ僕なんだ」
「し、知らない」
「答えは期待してないよ」
「あ、うん、ありがとう……?」
スティーブンはパスタを放置し、口元を素早く拭った。投げやりにテーブルにそれを置く。あっけにとられる私の手を握り立ち上がる。「あ、ちょ、パスタが」という抗議は無視された。会計も完璧に手早く済まされ、駐車してある車に乗り込む。後部座席に押し込められ、ドアが閉まる。
ロックがかかり、途端、車内が急激に冷え込んだ。
「な、な、……な」
実に胸の鼓動が高鳴る体勢もなんのその、本当にどうでもよくなるほど寒い。奪われた体温を少しでも取り戻したくて目の前の男に縋り付いたが、その指にも力が入らない。息が白くなり、真剣極まりないめちゃくちゃタイプな顔立ちにはめ込まれたガラスのような瞳が印象づいた。
寒すぎて痛い。
「か、勝手に死ぬから殺さないって言った」
答えはなかった。ギュッと締めつけられる痛みが、シートから垂れ落ちる脚先を包む。これヤバイんじゃない?
鳴り止まない歯の根の騒音の中、危険信号だけが脳裏に響いていた。
「あ、あれ?」
寒さは急速に薄れた。凍りついていた(……ような気がする)部品の感覚が身体に戻ってくる。震える手で今度こそスーツにしがみつく。
「……どうやら俺は、君が死なないようにしなくてはいけないらしい」
「……は、あ?」
今日は脳みそが空っぽになってばかりだ。
スティーブンの顔は『厄介ごとを掴まされました』と雄弁に語る。
「君が傷つくと俺も傷つく。これほどの痛みを感じるということは、痛みに関しては君の感覚が優先されるんだろう。考えたくないが、だとすると君が死ぬと俺も……」
不吉な沈黙の先に続く言葉は、私でも想像できる。でも。
「な、なんで?」
「こっちが訊きたい。君は一体何をした? ……ああ、何もしていないんだったな。……どうして俺なんだ?」
「し、知らない」
しばらく渋い顔をしていたスティーブンは、ふと時計を見た。私の上から退いてドアのロックを解除する。強くドアが閉まる衝撃で二度車体が揺れ、エンジンがかかる。
「悪いが、君を放置できない理由ができた」
「は、はい」
「これから見聞きすることを他の誰かに洩らすと、その時点で君はひとかけらも残さずに、……そうだな、……死ぬと理解しておいてくれ。『不運』も『偶然』も関係なく、だ」
この言葉が前代未聞のこけおどしだったことを、このときの私はさっぱり察せなかった。額面通りに受け取り、こくこくと何度も首を振る。
「も、洩らしません!」
「その言葉はあまり信用できないが、まあ、どうせそんな暇もないか」
「なんで信用できないの?……です?」
「だって君、俺に『パパ』の情報をざばざば洩らしただろ」
これには何も反論できない。
かっ飛ばす車の動きにくらくらする。
「その下手くそな敬語もなくていい」
ミラー越しに目が見える。こちらから見えたということは、向こうからも見えたに違いない。なにせ、それが終わりで始まりだったのだから。
「君と俺は今日から一心同体だ」
最低だな、とさらさらの悪態が吐き出された。
0726